環境・公害対策部だより
西宮アスベスト訴訟第一回口頭弁論 真相究明、さらなる飛散防止求める
2016.11.05
協会、西宮・芦屋支部が支援している「西宮こしき岩アスベスト裁判」の第一回口頭弁論が10月25日、神戸地方裁判所で開かれ、原告団代表で医師の上田進久先生(協会環境・公害対策部員)が意見陳述した。
この訴訟は、西宮市にあった旧夙川学院短期大学で校舎の解体工事が行われた際、アスベストが飛散した可能性が高く、精神的苦痛を受けたとして、周辺住民38人が、開発業者や解体業者、監督責任がある西宮市を相手に、慰謝料として計190万円の損害賠償を求めているもの。
上田先生は訴訟に至った経緯について、当初、解体業者は建材の一部にアスベストがあるとして西宮市に申請していたが、業者が変わると「アスベストはない」とする書類に差し替えられ、解体されてしまった。しかし、残存する建物に対し、住民が独自に調査すると、空調のダクトパッキンからレベル2のアスベストが発見され、設計図書からもアスベストが大量に使用されていたことが明らかになったと業者のずさんさを指摘。
また、西宮市は書類が指し替えられても十分な調査をせず黙認した上、住民がアスベストの存在を確認ししても、「アスベストはない、改めて調査するつもりはない」という態度を変えていないと批判した。
そして、裁判を通じて真相究明をめざすとともに、飛散防止に向けた取り組みが進み、将来アスベストによる健康被害に苦しむ人を減らしたいと思いを語った。
口頭弁論後の記者会見で、中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史事務局長は、アスベスト含有建物の解体について、規制がゆるく、業者はアスベスト除去費用を浮かせるため手抜き工事を行い、行政も見て見ぬふりをしがちであるとし、今回の裁判はずさんな業者や行政の態度を問うものであると裁判の意義について説明した。
西宮・芦屋支部でアスベスト研究会
西宮・芦屋支部は口頭弁論に先立ち、10月1日、西宮市民会館で上田進久先生を講師に「アスベスト問題研究会」を開催し、5人が参加した。
上田先生は訴訟の経過を説明するとともに、西宮市市議会で担当官が「阪神・淡路大震災の解体工事でも国の調査で周辺の大気に健康被害を及ぼすようなアスベストの飛散はなかった」と答弁したことを紹介。
市は大気モニターのアスベストの値が基準値を超えていなかったことを理由としているが、大気モニターの基準値と健康被害に因果関係はない上、値も不正確であると指摘。震災時のアスベスト飛散により、少なくとも5人は中皮腫で死亡している事実をどうとらえるのかと批判した。
最後に、震災によるアスベスト被害の検証はなされておらず、全体像も把握されていないことを指摘し、住民のいのちと健康を守るため、声を上げていく必要性を強調した。