環境・公害対策部だより
【声明】大飯原発の稼働を容認する高裁判決に抗議する
2018.07.14
名古屋高等裁判所金沢支部 裁判長 内藤正之殿
大飯原発の稼働を容認する高裁判決に抗議する
兵庫県保険医協会
第1078回理事会
関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを周辺住民が求めた裁判で、名古屋高裁金沢支部内藤正之裁判長は7月4日、差し止めを命じた2014年5月の福井地裁判決を取り消し、訴えを棄却した。この判決は原発の危険性と周辺住民の不安を無視するもので、断じて容認できない。
2014年の1審判決は、関電の地震対策に「構造的な欠陥がある」として憲法で定める人格権が侵害される具体的な危険性を認め、差し止めを命じていた。これに対し高裁判決では、過酷事故に至る地震動が原発を襲う可能性を否定せず、「(原発の)危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されている」などと安全軽視の考え方を示した。その根拠として原子力規制委員会が策定した新規制基準に適合しているとする規制委員会の判断を挙げるが、そもそも新規制基準は、規制委員会が「絶対安全とは申し上げない」と表明したものであり、適合したからといって安全を保証するものではない。
また、判決では「原子力発電そのものを廃止することは可能だろうが、その判断は司法の役割を超えており、政治判断にゆだねられるべきだ」と述べている。これは、行政から独立した立場で判断を下すという司法の役割を放棄するもので、日本国憲法で行政からの独立を定めた「三権分立」を自ら投げ捨てるものである。一審判決での、福島原発事故後、具体的危険性が万が一でもあるのか判断を避けることは「裁判所に課せられた最も重要な責務を放棄するに等しい」との立場を、高裁においても堅持すべきである。
福島原発事故の反省に立たず、周辺住民の不安に向き合わないこのような決定は、とても許されるものではない。われわれは、いのちと健康をまもる医療者として、今回の判決に強く抗議する。