環境・公害対策部だより
第7回石綿問題総合対策研究会 阪神・淡路大震災での石綿飛散の実態調査を
2019.02.15
将来の石綿関連疾患の健康リスクを低減させることを目的とした第7回石綿総合対策研究会が2月2日・3日に東京都内で開催された。この研究会は石綿(アスベスト)についてさまざまな分野の専門家、実務者、行政関係者らが一堂に会し研究成果を発表し、討論、意見交換をする場で、年に1回開催されているもの。協会環境・公害対策部は同研究会の趣旨に賛同し、部員の上田進久評議員が「阪神・淡路大震災アスベスト調査の曝露再検証」と題し話題提供を行った。
上田先生は、阪神・淡路大震災から24年が経過し、建物解体作業員以外でのアスベスト被害が明らかとなりつつあるが、アスベスト曝露の実態は検討されていないとし、震災直後に実施された環境庁(当時)、兵庫県、神戸市の調査資料に基づいてアスベスト飛散の再検証を行った。
兵庫県内の一般環境大気中のアスベスト濃度について、震災直後3カ月は震災前と比べ10倍から20倍程度の飛散が、それ以降も数倍程度の飛散が約6カ月持続しており、広範囲に長期間、高濃度のアスベスト飛散があったと問題提起。また、建物解体現場周辺の調査では毒性の高い青石綿や茶石綿も検出されており、一般環境における長期間曝露に加え、街中に点在する解体現場でのアスベスト曝露が加わった「多重曝露」という状態だったとした。
ハイリスクの人たちへの注意喚起や肺がん検診などへの受診勧告と共に、行政が中心となり震災に関連するアスベスト被害の実態調査や追跡調査としての検診体制を確立させる必要があると提起した。