環境・公害対策部だより
参加記 保団連原発問題学習会交流会 歴史的な運転差し止め判決「原発はとても危ない」
2019.05.25
全国保険医団体連合会(保団連)は4月14日、東京都内で第8回原発問題学習交流会を開催した。21協会から医師・歯科医師47人が参加し、兵庫協会からは加藤擁一・森岡芳雄・川西敏雄各副理事長が参加した。元福井地方裁判所判事で、2014年5月21日に関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を下した樋口英明氏が「原発の再稼働は認められない」と題して記念講演を行った。また、ふくしま復興共同センター代表委員の齋藤富春氏や各協会からの参加者が原発ゼロへ向けた各地での取り組みを紹介した。川西敏雄副理事長の参加記を紹介する。
野本哲夫保団連公害環境対策部長による基調報告の後、樋口氏が記念講演を行った。5年前、同氏による大飯原発の運転差し止めを命じた歴史的な(本人いわく当たり前の)判決に対し、兵庫協会は全面的に支持する声明をご本人宛に送付している。記念講演の内容を要約する。
各地で行われている原発の運転差し止め訴訟に対し、樋口氏を含め2人の裁判長が差し止めを決定したが、17人は稼働を許可する決定を下している。なぜ多くの裁判長は差し止めに賛成しなかったのか? 樋口氏はその答えに、1992年の伊方原発訴訟での「行政の判断を尊重する」という最高裁判決による判例と頑迷な先例主義を挙げていた。
そして樋口氏は、福井地裁で同差し止め訴訟の審理に入る前は「原発はそれなりに丈夫にできているだろう」と思っていたが、実は原発は非常識なくらい弱く、住宅メーカーは4000ガル(ガルは揺れの強さを示す単位)に耐えられる家を建てているが、大飯原発の想定は当時700ガルに過ぎず、「原発はとても危ない」と判断したとのこと。2000年以降だけでも700ガル以上の揺れを記録したことが29回もあったことから、良識と理性があれば原発の危険性から考えて運転を差し止めることは当然と発言されたことが印象的だった。
また、東電・国の原発への安全意識の欠如や、無責任さを指摘され、福島原発事故では幸運が重なりあの程度の被害で済んだが、そうでなければ被害はもっと甚大になっていた。原発の運転を差し止めた判決理由としては、原発事故は一度起こると国の存亡が関わることとなるからだと強調されていた。
「圧力はあったか?」の質問に同氏は淡々と「自分は感じなかったが、圧力を感じる裁判官はいるかも」と発言。また原発訴訟で訴える内容は簡潔さを意識するよう示唆があった。また樋口氏は「判決を言い渡した元裁判官が、その判決内容について講演することはまずはない」と語った通り、非常に貴重な機会だったと思う。
余談だが、世界で唯一の放射性廃棄物の最終処分場であるフィンランドのオンカロでさえ原発2基分の容量しかない。日本には約50基の原発があるが、その使用済み核燃料の最終処分方法は決まっていない。まとめはいつも同様で恐縮だが、引き続き脱原発運動を進める力となった交流会だった。
終了後、樋口氏と名刺交換をした際「5年前、あなたの判決に勇気を頂きました。ありがとうございました」とお伝えしたらとても嬉しそうにされておられた。さらに閉会までおられ、意見交換の際に運動を励ますご発言を積極的にされていたことが印象的だった。