環境・公害対策部だより
「六ヶ所再処理工場」審査書(案)パブリックコメントへの提出文
2020.06.16
青森県六ヶ所村の再処理工場が新規制基準に適合したとの審査書案について、原子力規制委員会が実施する意見公募(パブリックコメント)に、当会は6月12日に反対の意見を提出した。提出した意見の全文は下記のとおり。
「日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可申請書に関する審査書(案)に対する科学的・技術的意見の募集について」(パブリックコメント)への意見提出文
団体名 兵庫県保険医協会
意見提出者 環境・公害対策部長 森岡 芳雄
われわれは、いのちと健康を守る医師の団体として、下記の点から、本審査書(案)で認められた日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の安全性に対し、科学的・技術的に懸念があり、意見を提出する。
1.そもそも再処理により産出される放射性廃棄物の処理方法が確立しておらず、再処理そのものを中止すべきである。
2.P4「Ⅱ 再処理の事業を適確に遂行するための技術的能力」について、日本原燃株式会社に、事業遂行に必要な技術的能力が不十分であることが、これまでの事業実績から明らかであるにもかかわらず、それを看過している審査案は不適切である。本事業は、1992年の事業指定、1993年の着工から27年が経過した現在まで、様々な技術的トラブルが連続し、いまだに完成していない。事業者の技術的能力が不十分である証左であり、これまでの規制当局の判断に過誤があったことを示している。しかし、この点に関する審査機関としての自己反省は何ら見られず、事業者の説明を鵜呑みにして受け入れている感がある。これまでの事業の長期未完成の実態を踏まえた厳格な検証を行う審査を求める。
3.P.11「Ⅲ-1 再処理を行う使用済燃料の種類(冷却期間)の見直し」について、完全操業時、同事業からの、安全性が問題視されているトリチウムの年間排出量は福島事故でタンクに蓄積されている処理水の総量の10倍以上にものぼるとされる。福島第一原発事故に伴うトリチウム汚染水を海洋放出することの是非が現在社会的に大きな問題となっているが、それよりも一桁も大きい値を平常時の年間放出管理目標とするような施設はとうてい認められるものではない。
4.P.27「Ⅲ-3.1 基準地震動」において、現在の原子力規制委員会には、地質学の専門家は居ても、地震学の専門家は選出されておらず、原子力発電所再稼働における安全性を審査するに充分な能力が備わっているとは言えない状況にある。新たな審査基準を策定した上で審査をやり直すべきである。
5.P.100 Ⅲ-6.2.5 航空機落下に対する設計方針において、航空機落下が核施設のコンクリート構造を破壊し極めて厳しい事故に至ることが懸念されているにもかかわらず、極めてあいまいな航空機落下確率で評価し、実際にどこまで施設がもつかということすら正面から検討しない姿勢は、誤っている。2001年9月11日に発生した民間航空機ハイジャックによる米国同時多発テロの教訓を全く踏まえていない。加えて、本事業が行われる青森県六ヶ所村は、米軍及び航空自衛隊の三沢基地に近い。昨年4月には航空自衛隊のF35Aが三沢沖に落下する事故も起こっている。本事故やテロを想定し、航空機落下の施設のダメージについて改めて検証すべきである。