環境・公害対策部だより
抗議声明「神戸製鋼・神戸発電所4号機「火入れ」に抗議し稼働停止を求める」
2022.06.05
神戸製鋼所が神戸発電所4号機の「火入れ」を行ったことに対し、協会は5月14日、第1152回理事会にて抗議声明を採択し、関係機関に送付した。
抗議声明
2022年5月14日
神戸製鋼・神戸発電所4号機「火入れ」に抗議し稼働停止を求める
兵庫県保険医協会
第1152回理事会
神戸新聞によると、神戸製鋼所は4月28日、神戸市灘区で増設を進めてきた石炭火力発電所4号機について、試運転に向けてボイラーに点火する「火入れ」を行い、7月後半以降に試運転を予定し、2022年度中に本格稼働する見通しと報道されている。増設しすでに営業運転が開始された3号機と、既存の1・2号機とあわせると出力は計270万kWで、神戸市のピークの電力需要約200万キロワットを大きく上回る規模となるという。
石炭火力発電所は、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、PM2.5、水銀をはじめとする大気汚染物質や多量の二酸化炭素(CO2)を排出するため、昨年末の国際気候変動枠組条約の第26回締約国会議(COP26)では削減の必要性が明記されている。日本政府は「2050年にCO2排出実質ゼロ」を打ち出しているが、石炭火力発電所の廃止を決断せず、本火発の増設を認めている。
今回の発電所周辺は、旧公害地域で現在でもPM2.5の測定値が一部環境基準を超過している地域であり、NOxの高濃度ホットスポットの存在が確認される地域であり、保育所や小学校などが多数存在する人口密集地である。大気汚染の健康被害に閾値は存在せず、多くの人々の尽力で大気環境が改善されつつある中で周辺住民への健康被害の拡大が懸念される。
神戸製鋼所は「燃料にバイオマスやアンモニアを混ぜてCO2を減らし、最終的にはアンモニアだけを燃料にする研究を進める」としているが、現在の導入発電設備は最新のものではなく標準的なものであり、これに追加的にバイオマスやアンモニアを燃料にするというものであり、最大でも20%以下の削減にしかならならない。しかもバイオマス利用は詭弁に他ならないし、アンモニアの生成には大量の電気が必要とされるため実際のCO2排出削減効果はわずかであり、温暖化対策に貢献するものとはとても呼べない。
私たちは命と健康を守る医師・歯科医師の団体として、健康被害を生み出し、温室効果ガスの排出量が大きい本火発の稼働中止を神戸製鋼所に求めるとともに、日本政府には石炭火発のゼロを決断し、廃止に向けた計画と準備を具体化することを求める。