環境・公害対策部だより
声明 泊原発運転差し止め判決を支持する
2022.06.11
2022年6月11日
札幌地方裁判所裁判長 谷口哲也様
泊原発運転差し止め判決を支持する
兵庫県保険医協会
第1154回理事会
札幌地裁は5月31日、北海道電力(北電)・泊原発1~3号機すべての運転の差し止めを命じた。われわれは、住民の安全と健康を守るという観点で運転を差し止めた同判決を支持する。
本判決は、津波対策の安全性を北電が立証できていないとし、津波による事故が起こった際「原発から半径30kmの範囲内に住む44人について生命や身体といった人格権を侵害するおそれがある」としている。
津波対策について、北電は当初泊原発の最大想定津波に伴う水位上昇を9.8メートル程度と設定し、敷地の高さと併せて16.5メートルとなる防潮堤を建設した。しかし原告側や規制委員会から防潮堤の地盤の軟弱性や地盤沈下の恐れを指摘され、新たな防潮堤を建設する方針を示したものの、地裁の追証の要請には「規制委が審査中」として応じなかった。住民の安全を軽視する姿勢の現れだと言わざるを得ない。
原発の訴訟では裁判所が規制委の判断を待つことが多いが、本訴訟は提訴から10年が経過しており、北電の主張に延々と原告が対応させられるのは正当化できないとして判決に踏み切った。合理的な審理期間を経れば、規制委の判断の前に裁判所が判断しても良いと示したことは、司法の独立性を保つ意味でも極めて重要といえる。
本判決は、国民のいのちを守るという立場で原発の運転を差し止めた良識ある決定である。政府は「再稼働を進める政府方針に変更はない」としているが、住民の安全を常に脅かす原発はゼロにするべきである。
われわれは、いのちと健康をまもる医療者として、本判決を支持し、北海道電力には控訴を取り下げ、泊原発の廃炉を決断することを求める。また、全電力会社に危険な原発の新増設、稼働、再稼働を断念するよう求める。