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主張 「原発活用」への方針転換 福島第一原発事故の反省忘れたか

2023.02.25

 3月11日が近づいている。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から今年で12年になるが、帰還困難区域はなくならず、いまなお多くの被災者が避難生活を強いられている。事故はいまだに収束していない。原因究明もうやむやにされたままである。
 にもかかわらず、岸田政権は昨年12月、ロシア・ウクライナ紛争を口実に地球温暖化対策やエネルギーの安定供給などを理由として、積極的に原発を活用するエネルギー政策へと方針を大転換し、原則40年、最大60年としていた運転期間から運転停止期間を無謀にも劣化対象外であるとして除外することや次世代原発の建設などを盛りこんだ方針を2月10日に閣議決定した。今国会では原発の活用を「国の責務」と明記した法案提出も予定している。
 さらに、2月13日には原子力規制委員会が、60年超の運転に関する安全規制についての新たな制度案と原子炉等規制法改正の条文案を多数決で了承した。多数決となるのは異例で、反対した委員は、地震、火山のリスクを審査する立場にあり、電力会社の問題で審査が長引いてもその分運転期間を延ばせるのはおかしいとして「審査をする人間としては耐えられない」と批判し、また、賛成した委員の中からも「我々は外のペースに巻き込まれずに議論すべきだった」などの意見が出されているという。規制委員会の独立性が侵されているのは明らかである。
 事故の反省を忘れ、国民のいのちと健康を危険にさらす政府の原発活用方針は断じて認めるべきではない。
 安定したエネルギー供給は安全性を無視してはありえない。原発は一度事故を起こせば未曽有の汚染を引き起こす危険極まりない発電所であることは、福島第一原発事故が示しており、紛争時の危険性が新たにロシア・ウクライナ紛争で示されたばかりではないか。
 温暖化対策というが、原発は地球温暖化に勝るとも劣らない環境汚染と破壊をもたらす放射性廃棄物を産出しつづける、未来への多大な負の遺産である。
 問題は、政府が積極的に再生可能エネルギーの導入や省エネ・節エネ、産業構造、物流の改革に努めてこなかったことである。温廃熱、太陽光発電・太陽熱、地熱・地中熱、風力発電、小水力発電などの利用、直流送配電網やスマートグリッドの導入など、大規模発電から小規模分散型の、地産地消、地元企業・住民参加による地域創生型のエネルギー創出に取り組めば、原子力抜きの2050年カーボンニュートラルは可能であるということは、さまざまな研究グループが指摘している。資源の乏しい日本にとって、エネルギー自給への道でもある。
 原子力の維持、開発に投資している莫大な資金を投入すれば、もっと開発できるエネルギー源は存在し、脱炭素もエネルギー供給も実現できる。
 今求められているのは、原発推進ではなく、再生可能エネルギーを基軸にしたエネルギー政策への転換である。

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