兵庫県保険医協会

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原発賠償ひょうご訴訟 国の責任認めない不当判決

2024.04.15

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「認めよ!避難の権利」と書かれた幕を掲げ神戸地裁へ向かうひょうご訴訟原告団・弁護団

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前日集会で郷地理事が内部被曝の危険性について説明

 東京電力福島第一原発事故で、福島、宮城県から兵庫県に避難した30世帯78人が2013年9月に国と東電に損害賠償を求めて提訴した原発賠償ひょうご訴訟。3月21日、神戸地裁で判決が出され、龍見昇裁判長は、東電の責任を認め、一部原告に賠償を命じたものの、国の責任は認めなかった。
 本訴訟では郷地秀夫理事が証人として内部被曝の危険性と避難の必要性を訴えており、協会も支援してきた。
 今回の訴訟では、①津波の到来を予測し、対策を取っていれば事故を回避することができたかどうか、②放射性物質による内部被曝の危険性、③国の原子力損害賠償紛争審査会が定めた支払い基準を超える賠償を認めるかが争点となった。
 判決は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測の長期評価は、すぐに津波対策を義務付けるほどの知見とは認められないとした。また、国が長期評価を前提に、東電に適切な措置を指示したとしても、「津波で大量の海水が原発内に浸入することは避けられなかった可能性が高い」として原告の訴えを退けた。これは2022年6月に同様の争点で出された最高裁判決を踏襲したもの。
 一方、東電に対しては、過失の有無にかかわらず、賠償責任を負うと規定する「原子力損害賠償法」に基づき、責任を認めた。居住地域の放射線量や原発からの距離などから事故と避難との因果関係を判断し、因果関係が認められなかったり、認定された支払額相当をすでに受け取ったりした原告については、請求を棄却した。
 弁護団はこの判決について、「最高裁の不当判決を盲目的に追随するコピペ判決であるだけでなく、数々の看過できない問題点を残した極めて不当な判決」「認容された損害額は、原告らが背負った困難との落差があまりにも大きく...原告の個々の実情については十分な考慮がなされているとは言えない」と強く批判した。

判決前日集会
郷地理事が内部被曝の危険性語る
 判決前日の3月20日に、同訴訟の支援団体「ぽかぽか★サポートチーム」が灘区内で集会を開催。協会から、横田裕一理事・川西敏雄参与が参加した。
 協会の郷地秀夫理事が「福島原発事故による内部被曝 最近の放射線汚染は?」と題して講演した。
 郷地先生は、福島では今なお放射線汚染は続いており、不溶性放射性セシウム含有粒子による長期にわたる内部被曝の可能性があり、安全性が担保されていないと各種データを示して、長期にわたる避難の正当性を訴えた。

 協会は4月6日、正副理事長会にて、原発賠償ひょうご訴訟神戸地裁の不当判決に対する下記の抗議声明を確認し、関係機関に送付した。

抗議声明

2024年4月6日

神戸地方裁判所 龍見昇裁判長

福島原発事故集団訴訟で国を免責した神戸地裁の不当判決に抗議する

兵庫県保険医協会 環境・公害対策部長 森岡 芳雄


 福島原発事故によって兵庫県内への避難を余儀なくされた被害者30世帯78名が損害賠償を国及び東京電力に請求している訴訟について、貴殿は3月21日、東京電力のみに対して法的責任を認め、賠償を命じる判決を言い渡した。福島原発事故を発生させた国の責任については、「国が、適切な対策を講じるよう東京電力に義務づけたとしても、事故を避けられなかった可能性が高い」として、国の責任は認めなかった。
 本判決は東日本大震災の前に政府の地震調査研究推進本部が公表した「長期評価」の信用性を認めず、2022年6月17日の最高裁の不当判決を丸々コピーしたにすぎない不当判決である。
 「長期評価」では、巨大津波を起こす地震が発生する可能性が示されていたが、判決は、「長期評価」はすぐに津波対策を義務付けるほどの知見とは認められず、仮に国が東電に想定津波に基づく防波堤を設置させたとしても「津波で大量の海水が原発内に侵入することは避けられなかった可能性が高い」として国を免責した。最新の科学的知見を反映して規制権限を行使するという国の責務を否定したに等しく、「想定外」という言葉で責任を回避しようとする国に忖度した判決だと言わざるをえない。また、原告らが訴えてきた内部被曝の危険性についてもまともに評価しなかった。
 国策として推進されてきた原発によって生じた被害について国の責任を認めないとする判決は不当である。地震本部は、阪神・淡路大震災を機に発足した国の機関であり、政策に直結する地震の調査研究推進などを目的にし、本部長は文部科学大臣が務める。その評価が信用できないのなら、何を根拠に災害対策をすればいいのか。
 われわれは、いのちと健康をまもる医療者として、今回の判決に強く抗議する。
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