兵庫県保険医協会

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阪神・淡路大震災30年メモリアル企画

2025.02.05

 阪神・淡路大震災30年の節目に協会が開催・協力した企画(前号既報)について詳報する。

協会/西宮・芦屋支部 阪神・淡路大震災30年の集い
「原発震災」リスク強く警告
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「原発震災」の危険性を語った石橋氏

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フロア発言した小出氏・アイリーン氏

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(左)アスベストの今後の被害に警鐘をならした上田先生
(右)美しい二胡の演奏を聞かせる劉揚氏

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ポスター展示でこれまでの取り組みなどを振り返った

 協会と西宮・芦屋支部は、1月18日に西宮市のなるお文化ホールとオンラインで「阪神・淡路大震災30年の集い」を開催し、会員・スタッフや全国各地の被災地から282人が参加した。
 「阪神・淡路大震災-東日本大震災・原発事故-熊本地震-能登半島地震 阪神・淡路大震災から30年 そしてこれからの30年を見据えて」をテーマとし、「震災経験を語り継ぐ・風化させない・新たなつながりを拡げる」ことを目的とした。
 西山裕康理事長が「南海トラフの発生確率は今後30年で80%とされ、もはや震災後でなく震災前夜だ。そのための対策が行政には求められる」などとあいさつ。
 メイン講演に立った石橋克彦・神戸大学名誉教授(地震学)は「『大地動乱の時代』と『原発震災』」をテーマに講演。「地震は止められないが震災はわれわれの努力で軽減できる」と地震と地震災害=震災は違うとした上で、地震の起きるメカニズムを説明し、「今後来たるべき南海トラフ巨大地震災害は、過去の南海トラフ震災とは根本的に違う」と説明。
 地域の自己完結性が崩壊し、極端な過密大都市と地方の過疎が生まれている現代の日本が超広域大震災に遭うと、救援の人・物資が被災地に行き渡らないと指摘。地震対策の根本は、食やエネルギー、仕事など日々の暮らしが自立した地域社会の創造であり、真の震災軽減には、社会と暮らし方を根本的に振り返ることが必要であると強調。
 特に大量の放射能を放出し広大な地域に被害を及ぼす原発と、まともな地震対策が検討されておらず、事故の際に乗客救助・復旧が極めて困難なリニア中央新幹線は、賢明な巨大地震対策の対極にあると強く批判した。
 石橋氏の講演を受け、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏と環境ジャーナリストのアイリーン・美緒子・スミス氏が発言。
 小出氏は莫大なエネルギーを放出する地震が頻発する日本で原発を稼働させる危険を指摘。原発事故で「想定外」はあり得ず、石橋氏の提言に応え、私たちはどういう社会をつくるべきかを考えていかなければならないと訴えた。
 アイリーン氏は、2007年に中越沖地震による柏崎刈羽原発の事故を受け、石橋氏の協力を得て記者会見したが、マスコミはほとんど取り上げず、福島の事故に向かう決定的岐路となったと考えていると紹介。今日の石橋氏の講演を受け行動を起こさないと再び事故が起きると警告し、政府のエネルギー基本計画へのパブリックコメント提出を呼びかけた。
能登半島地震 医療提供の取り組み紹介
 石川県七尾市にあるねがみみらいクリニックの根上昌子院長は「能登半島地震から1年 そして風水害」と題して報告。
 能登地方は元来、医療機関数・医師数ともに全国平均より大幅に少ない上に、被災し閉院や休診、診療時間短縮・変更をしている診療所が多数あるとし、被災地の住民に医療を届けるため、オンライン診療やドクターカーなどを活用しているとした。また、被災者の栄養不足や性暴力被害の対策にも取り組んでいると紹介した。
 「阪神・淡路大震災とアスベスト」をテーマとして、協会西宮・芦屋支部世話人でNPO法人ストップ・ザ・アスベスト代表の上田進久先生が報告。当時の映像や報告書からアスベスト含有建物の解体作業等により発がん性の高い青石綿や茶石綿を含む高濃度のアスベストが飛散したことは明らかであることを示した。そして神戸市など行政は、誤ったリスク評価を公表し続けて被害対策には無関心であるとし、被害者の増加が危惧され、早期発見のための積極的な肺がん検診受診が不可欠と強調した。
ポスター展示で各被災地を結ぶ
 会場ロビーには、阪神・淡路大震災、東日本大震災、福島第一原発事故、熊本地震等各地の被災地での医療者や住民の取り組みに関するポスターを展示。作成者がポスターの内容について来場者に直接語り、活発な意見交流が行われた。
 文化企画として、劉揚氏が二胡の演奏を披露。「しあわせ運べるように」や「見上げてごらん夜の星を」などの曲を、切ない調べで聞かせ、最後は手拍子と共に「上を向いて歩こう」で締めくくった。

復興県民会議 阪神・淡路大震災30年メモリアル集会
「暮らしの再建」求め、たたかい続ける
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記念講演した室崎益輝・神戸大学名誉教授(上)と井上英夫・金沢大学名誉教授(下)

 協会などでつくる阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議(復興県民会議)は1月17日、新長田ピフレホールで「災害被災者のくらし再建・人間復興へ 住み続ける権利と人権」と題して、阪神・淡路大震災30年メモリアル集会を開催。約300人が集まり、震災の犠牲者を追悼するとともに、経験をふまえ、「暮らしの再建」を求めるたたかいを、大きく全国に広げていくことを確認した。川西敏雄参与が参加した。
 主催者を代表してあいさつした畦布和隆氏(復興県民会議代表委員)は、復興県民会議結成の経緯について、地震発生後の大規模な被害を受けて、国や自治体に対する救援・復興対策の強化を求める共同闘争の枠組みとして、合志至誠・兵庫県保険医協会理事長や菊本義治・県立神戸商科大学教授(肩書きはいずれも当時)らを代表世話人とし、県内の労働組合や商工団体などの団体があつまり結成されたと振り返った。
 そして、「人間復興」をスローガンに、政府に公的支援・個人補償を求め、署名や集会、中央要請、アピール賛同、国連・社会権規約委員会での訴えなど、粘り強い運動を続け、「個人財産に税金の投入はできない」とする国の姿勢を転換させたこと、しかし、阪神・淡路の被災者は被災者生活再建支援法の支給対象外であること、支給金額・支給範囲の拡充等を求めて闘った結果、数次の改正を実現してきたこと、災害援護資金を貸し付けでなく給付にすべきと求めてきたこと、借り上げ住宅からの追い出し問題等、30年の運動を振り返った。
 また、「避難所」の整備強化、食事やトイレの改善、防災施策の充実こそが政府の急務であり、不断の努力が求められていると強調した。
阪神の教訓・誤り検証し継承を
 記念講演は、室崎益輝・神戸大学名誉教授と井上英夫・金沢大学名誉教授が登壇。
 「阪神・淡路大震災30年 備え、伝え、繋ぐ」をテーマに話した室崎氏は、震災30年目を迎えたからこそ明らかになっている教訓や誤りの検証を続け、今後に伝えていくことが必要とした。また、復興における「コンパクトシティ」は本来、小さな集落でも自立できる自立性を意味していたはずが、集落の集約という全く違う意味となってしまったと振り返り、被災者らの思いをくみ上げる仕組みを先進事例から学ぶべきとした。
 一人ひとりが豊かになり、勇気をもって暮らせるようになることが「人間復興」であり、求められると強調し、今後は多様化に配慮しながら、人間復興の視点をもち、人間中心の防災のあり方を考えていかないといけないとした。
復旧進まぬ能登半島 住民の住み続ける権利保障を
 「能登半島地震1年-住み続ける権利・人権 人間の尊厳・自己決定を問う」をテーマとして講演した井上氏は、阪神・淡路大震災から「住み続ける権利」を総合的な人権としてずっと提唱しており、これは「どこに、誰と、どのように住むか」を国が保障する権利であるとした。
 メディアではいかに能登半島地震後、皆で復興に向けてがんばっているかという話ばかりだが、9月の水害による被害も重なり復旧すら進んでいないと紹介。住み続ける権利が保障されてこそ、文化やコミュニティなどの復旧は初めて実現されるとした。
 そして、石川県が震災後発表した「創造的復興プラン」は復旧が軽視され、被災者・住民の声、参加が欠落した計画であると批判し、現在見直しを訴えていると協力を呼びかけた。
長田メモリアルのつどい
長田のまちの30年住民・商店主から聞く
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震災復興と地域活性化のために作られた鉄人28号を見学

 協会神戸支部も参加する震災復興長田の会は「ひと・街・くらし 1・17長田メモリアルのつどい」を長田区内で開催、125人が参加した。参加者は火災被害が大きく再開発された長田の街を歩いた後、会場で住民や商店主、学生ボランティアらの発言を聞き、30年を振り返った。
 大正筋商店街で茶販売店を営む伊東正和さんは、被災後「10年後にはもっとにぎやかになる」と言われて神戸市から再開発後の店舗を購入。しかし、現在も多くの店舗が売れ残り、値下げがされる一方で、高い負担で店舗を購入し今も重い固定資産税等に苦しむ商店主には何の補助もないと改善を訴えた。
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