国際部だより
国際部オンラインセミナー「やさしい日本語」実地研修会
2022.08.05
「やさしい日本語」とは、難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語で、日本に在留する外国人とのコミュニケーションに役立つツールとして、注目されている。
昨年6月の講義形式の研修会に続き、今回は外国人の方を模擬患者として、よくある診察室でのやりとりを、参加者がやさしい日本語に言い換える実技研修会とした。
まず、入門・やさしい日本語認定講師の高橋華奈氏が、「やさしい日本語」の概要を解説。日本に在留する外国人は8割以上が日常会話に困らない程度に会話できるが、医療現場でコミュニケーションに困った経験をした人が多いとし、「やさしい日本語」は医療現場でも大切だと語った。相手の語学力や状況にあわせて多言語サービスを利用すること、表情を見て理解を確認しながら話すことが大切とした。
その後、参加者は五つの班に分かれ、グループディスカッション。患者役の外国人と「やさしい日本語」を使ったロールプレイを行った。
患者役からは、「ジェスチャーがあるとわかりやすい」「歯が汚れている、と言われると、私の国ではとてもいやな気持ちになる」などと、各参加者に対し、感想が出された。
参加者は「外国の方と話して何が伝わるか、伝わらないかがわかった」「ゆっくりていねいに話すということを普段から気をつけたい」「フィリピンの方だからと英語を使ったが、すべての方に通じるわけでないことがわかった」などと感想を述べた。
開催には、入門・やさしい日本語認定講師の方々と兵庫日本語ボランティアネットワークの協力を得た。
感想文1 患者さんとの信頼関係どう築くかが大切
7月10日の研修会では、日本に住んでおられる外国人の方に、捻挫と歯肉炎の診察内容を説明するロールプレイと、その後グループディスカッションを行いました。
捻挫も歯肉炎も、わかりやすい日本語に言い換えることが難しく、説明をするこちらが戸惑ってしまう場面もありました。そこで、初めに受けた講義の中の「はっきり言う」・「さいごまで言う」・「みじかく言う」の3つを合わせた「ハサミの法則」と、「わけて言う」・「せいりして言う」・「だいたんに言う」の三つを合わせた「ワセダ式」を思い出し、実践しました。すると、概ね話が通じたので安心しました。
ところが、「歯垢による歯肉炎」を「歯の汚れで腫れています」と伝えた時のことでした。相手の方から、「内容は理解できたけど、歯が汚れていると言われて、自分の歯が汚いと思うと悲しくなった」と言われました。自分としては、そのようなことは意識せずに言ったことが、相手を傷つけてしまうことになり、ショックを受けました。また、やさしい日本語を使おうとすることに意識が集中してしまい、肝心の病状説明が丁寧にできているのかどうかが気になりました。
この研修会を通じて、普段日本語母語話者が使っている日本語をやさしい日本語に言い換えることは、練習することが必要だと実感しました。そして、どのような日本語であれば通じるのかだけでなく、どのようにすればお互いの信頼関係を築ける診察ができるのかを考えて接することこそ大切だと思いました。
最後に患者役の外国人の方が言っておられた、「ちゃんと相談することができる先生がいてくださることがありがたい」という感想が大変印象的でした。
今回はコロナ禍のためほぼオンラインでの研修会でしたが、対面式だとより深い学びになると思いますので、ぜひ企画していただきたいです。
【豊岡市・たじま医療生活協同組合 春木 圭介】
感想文2 ぜひ全国での開催を
8月2日に東京であった保団連夏季セミナーで兵庫協会の皆さんから「良い企画がある」と誘っていただいたのがきっかけで、本研修会にオンラインで参加した。
何の気無しに参加したが、たいへん良い企画で勉強になり、すぐに臨床の現場で役立つものだった。兵庫協会の担当者の方、そして、患者役を務めてくださった在日の外国人、ファシリテーターの皆さんに心よりお礼を申し上げたい。
研修会では、「やさしい日本語」について、話す前に整理する、一文を短くし語尾を明確にする、尊敬語・謙譲語は避け丁寧語を使う、等の講演があった。
そして、捻挫、歯肉炎で来院したとの二つのケースで、患者役に対し医療者が実際に病状や治療の進め方の説明をしていった。
捻挫は歯科で扱う病態ではないが、「骨折ではない」と明確に説明し安心感を与えるのが大事なことと、「捻挫」「弾性包帯」「腫脹している方を挙上すると早く腫れが引く」ことをどう平易に説明するかがたいへんだった。
歯肉炎に関しても、「歯垢による歯肉炎」「歯石は自分では取り除けないので当院で除去します」のは説明しにくかった。短い文章で端的に、ジェスチャーや実演などを交えると分かりやすいことを再認識することができた。
ポストコロナでまた外国人が増えることもあり、どこの病院、診療所でも外国人と対応する必要性が高まることだろう。こうした研修会を全国で開くべきだとも感じた。
【保団連理事(福岡県北九州市・杉山歯科)杉山正隆先生】