政策宣伝広報委員会だより
県知事選挙特集 井戸県政12年の検証(上) 福祉医療費 4割カット
2013.07.05
県知事選挙に向け、協会が実施した候補者アンケートに対し、井戸現知事からは回答がなかった。井戸県政の12年間、県の医療・福祉はどう変わったのか、2回に分けて検証する。
県の福祉医療制度は、障がい者や乳幼児などの医療費窓口負担を自治体が助成するもので、県と市町が半額ずつ出し合って実施する県下共通の制度である。兵庫県の福祉医療の実態を検証してみよう。
予算総額からみると、2001年、貝原県政時代の最後の年の予算は183億円だったが、井戸県政の2012年度の予算は112億円である。貝原県政と対比すると71億円少なく、4割カットである(図1)。
マル老改悪消せない公約違反
もっとも影響が大きいのは、老人医療費(マル老)で、01年度73・6憶円から12年度9・5憶円へと約64億円が削減され、9割のカットである(図2)。
削減の手法は所得制限の強化で、対象者は01年度の約19万8000人から、12年度には2万3000人まで10分の1に削減された(図3)。井戸知事は05年の知事選挙で、マル老について「対象者率50%を堅持して全国一の医療費助成水準を確保します」と公約していた。「対象者率50%」とは、当時の対象人口35万人に対し、16~17万人程度を対象としていた実績を指してのものであった。協会は、2009年知事選挙で、井戸知事に公約違反として抗議し、質問状を届けたが、井戸知事は「回答いたしかねる」とし、自ら公約違反を認めたに等しい姿勢であった。
マル乳・こども医療費も削減
こども医療費助成制度は、対象年齢が拡大され、拡充された印象だが、予算の実体は減額されている。乳幼児(マル乳)とこども医療費の合計は、01年度42・8億円から12年度36億円へと、約7億円カットされている。こども医療費助成が10年度から開始されたにもかかわらずの減額は、所得制限の強化などによるマル乳の削減が大きい。
「こどもの医療費」の実施内容は、全国と比較すると、特異的傾向がある。
現在、通院、入院のいずれかで「中学卒業まで」を対象にしているのは、所得制限の有無を別にして、群馬、千葉、東京、愛知、神奈川、静岡、鳥取、大分、兵庫の9都県で、いわば全国の中で先進グループといえよう(表)。しかし、患者負担の程度には大きな開きがある。4都県は負担を「無料」にしているが、5県は「有料」で、このうちもっとも患者負担額が高いのが兵庫県である。
入院で「有料」5県のうち、最も負担が低いのは神奈川県で1日100円。千葉県は1日300円、静岡県が1日500円、兵庫を除いて最高は大分県で1日1200円である。
これに対して兵庫県は、定額ではなく「自己負担の3分の2負担」としている。これは、入院費用の実態からすれば、最低でも数千円はすることになる。つまり、兵庫県は中学3年まで対象にしてはいるが、助成額のレベルは先進グループ中では最低なのである。
通院でも同じ傾向で、他県が1回200円、同300円などとしているのに対し、兵庫県の「1日800円」はもっとも高い。しかも「800円」は小学3年生までで、4年生から6年生までは、入院と同じく「自己負担の3分の2負担」である。他県が低額で安心してかかれるのとは大きな違いになっている。
対象年齢の範囲だけでみれば、全国の先進グループに入るが、実際の助成額はきわめて少ないというのが兵庫県の特徴なのである。
そのため市町は、県制度に上乗せして、対象年齢や無料化を実現している。
例えば、入院で「中3まで無料」は12年時点で県下39市町にまで広がっており、自治体数で8割が「無料」を実現している。市町が県の低水準な助成額をカバーしているのである。通院では「中3まで無料」を実施している市町は、まだ2割にすぎない。市町の努力で対象は広がりつつあるが、県が助成内容をレベルアップすれば、全市町で「中3まで無料」を実施することは十分可能である。
マル身でも対象者削減
井戸県政は、重度障害者(児)助成事業(マル身)でも、所得制限額を引き下げて対象者を削減してきた。県は「自立支援医療制度との均衡」を持ち出したが、自立支援法そのものが天下の悪法で、改定を余儀なくされている代物である。悪法を持ち出しても、対象者を削減する根拠にはならない。
県が姿勢をあらため、市町と協力すれば、相当の福祉医療が可能である。