政策宣伝広報委員会だより
公的保険を脅かす「TiSA」 日医総研の坂口研究員が講演 政策研究会「新サービス貿易協定と医療」
2015.04.15
TPPと同時に交渉が進められている
新サービス貿易協定の問題点が説明された
坂口氏は「2015年 医療のグランドデザイン」で、日医総研が2000年に推計した2015年の医療費と、当時の厚労省が行った推計、実際の医療費を比較し、政府の医療費抑制政策によって、医療需要が抑え込まれてきたことを説明。安倍政権の狙いは、抑え込まれた医療需要を医療周辺産業に誘導して、経済成長を促すことだと述べた。そしてTPPやTiSAは、こうした流れを促進するものだと解説した。
TiSA(Trade in Services Agreement=新サービス貿易協定)は、2013年6月にジュネーブで開始された交渉で、現在日・米を含む23の国と地域が参加。交渉の対象は「モノ以外のすべての貿易」とされており、医療サービス分野も含まれていると解説した。
また、交渉過程について「TPPと同様、秘密主義が貫かれていて、不明な点が多い」とした上で、現在明らかになっていることとして、貿易・投資に対する新たな障壁を設けることや、新たな輸出制限を課すことを禁止するスタンドスティル条項、いったん緩和した規制を二度と厳しくできないラチェット条項が含まれていることなどを紹介。現在、保険給付の対象となっていない先進医療や新薬は、安全性や有効性が確認されても、公的保険給付の対象にすることができなくなる危険性があると警鐘を鳴らした。
また、EUのコミッショナーとUSTR(米国通商代表部)のフロマン代表が発表した共同声明で、TiSAは、医療、社会保障を政府が提供することや支援することを妨げないとされたが、安心はできないと述べた。その理由として、自分たちの利益を最大化するために市場開放を求める米国の多国籍企業が日本の財界と連携協力し、「御用学者」や「御用マスコミ」がお墨付きを与えるという、構図が変わっていないからだと指摘した。
坂口氏は「医療・社会保障分野は、常に内外からの規制緩和、市場開放圧力にさらされている。だから、私たちの国民皆保険制度の価値を、医療の世界に明るくない人にも知らせていく必要がある」と訴えた。