政策宣伝広報委員会だより
2016年診療報酬改定 実質1%超のマイナス
2016.01.25
政府は昨年12月21日、診療報酬改定率を決定。本体+0.49%、薬価▲1.22%、材料価格▲0.11%で、全体で▲0.84%(国費ベースで▲864億円)というマイナス改定になると発表した。
他に、改定率の算出に含まれない引き下げとして、「医薬品価格の適正化」(▲502億円)、「門前薬局の評価の適正化」(▲38億円)、「経管栄養製品に係わる給付の適正化」(▲42億円)、「その他(湿布薬の枚数制限等)」(▲27億円)などが打ち出されている。これらを含めると1495億円、約1.5%のマイナス改定となり、公称の改定率を上回るマイナス幅だ。
協会は1月9日付で、マイナス改定に対する抗議声明を安倍首相宛に送付。厚生労働省による医療経済実態調査結果でも医療機関経営は依然として厳しい状態にあると指摘し、「適正化」の名を借りたマイナス改定は厳しい医療機関経営や医療従事者の雇用・労働環境をさらに悪化させると批判した。
マイナス改定に抗議声明
昨年末の診療報酬マイナス改定の決定を受け、協会は1月9日の第1031回理事会で下記の抗議声明を採択し、関係各機関に送付した。
兵庫県保険医協会
第1031回理事会
理事長 西山裕康
小泉構造改革以来いっそう強まってきた医療費抑制策により、全国各地で「医療崩壊」と呼ばれる深刻な影響が地域医療に及んでいる。昨年11月に発表された厚労省による医療経済実態調査結果においても、医療機関経営は依然として厳しい状態にあることが明らかとなっている。こうした中での「適正化」の名を借りたマイナス改定は、厳しい医療機関運営や医療従事者の雇用・労働環境をいっそう悪化させるものにほかならない。
診療報酬とは本来、医療機関が良質の医療を安定的に提供するための原資であり、国民が受ける公益医療の質と量を規定するものである。診療報酬の適切な引き上げは、地域医療の充実にとって必要不可欠である。
われわれは引き続き患者・国民と手を携えながら診療報酬の大幅引き上げと患者窓口負担の軽減を求め、運動を進める決意である。このような実態を無視したマイナス改定に抗議する。
診療報酬改定内容骨子のポイント
「入院から在宅へ」強引な誘導
決定された改定率を踏まえ、1月13日の中医協(中央社会保険医療協議会)の総会で、塩崎厚生労働大臣が改定内容を諮問。「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携」を重点課題とした「平成28年度診療報酬改定の基本方針」(昨年12月に策定)に基づき、改定の骨子を示した。ポイントを解説する。
医科
急性期医療見直し在宅復帰を促す
骨子では、入院患者の早期退院の具体化など、これまでの改定に引き続き「入院から在宅」への強引な誘導が示されている。
入院医療は、前回に続き急性期医療を「適切に評価する」よう見直しつつ、在宅復帰を一層促す内容。
外来では「主治医機能の評価を推進するため」として、「1患者1医療機関」の要件が設けられている地域包括診療料・地域包括診療加算の対象疾患の拡大を挙げている。
「同一建物居住者」評価の見直し
在宅医療では、「患者の状態及び居住場所に応じたきめ細かな評価を実施する」として、在宅時医学総合管理料・特定施設入居時等医学総合管理料について、「月1回の訪問診療による管理料の新設」「重症度が高い患者の評価の拡充」「『同一建物居住者の場合』の定義の見直し及び同一建物での診療人数による評価の細分化」を挙げている。
同様に、在宅患者訪問診療料についても「同一建物居住者の場合」の評価を見直すとしている。
湿布薬にも保険外しの道
「一度に多量に処方される湿布薬」については、「原則として処方せん料、処方料、調剤料、調剤技術基本料及び薬剤料を算定しない」とされ、これまでのビタミン剤やうがい薬のように保険外しの道が敷かれている。
協会・保団連の要求一部で反映も
協会や保団連が要求してきた問題も一部改善が見込まれている。
「入院中の患者の他医療機関受診」による入院料減算の問題については、「特に診療科の少ない医療機関等に配慮した控除率に緩和」としている。また、二つ以上の医療機関での異なる疾患に対する自己注射指導管理料の算定も可能にするとしている。
歯科
地域包括ケア推進のため「かかりつけ歯科医」評価
地域包括ケアシステム推進のためとして示されている「かかりつけ歯科医」の機能については、(1)エナメル質初期う蝕に対する定期的かつ継続的な管理(F局)、(2)歯周基本治療等終了後の病状安定期患者への定期的かつ継続的な管理(SPT)、(3)口腔機能の低下により摂食機能障害を有する在宅患者に対する包括的な管理、以上3点を評価するとしているが、いくつかの施設基準を条件に提示しており、全てを要件にされれば非常に高いハードルとなる。
チーム医療の推進では、周Ⅲの要件見直し、周術期口腔機能管理後手術加算の拡充など、周術期における医科歯科連携の推進を挙げている。また、栄養サポートチームの一員として歯科医師が診療した場合を評価するとしている。
在宅歯科医療では、在宅かかりつけ歯科診療所加算の施設基準および名称の見直し、歯科訪問診療料の20分要件の一部見直しなどが示されている。
口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応等
その他、以下の項目などが示されている。
・歯科外来環境体制加算の初診時および再診時の評価見直し
・全身疾患を有する患者へのバイタルサインのモニタリング
・糖尿病患者の歯周基本治療に先行した局所抗菌剤の投与
・有床義歯または舌接触補助床装着患者への咀嚼機能検査等
・口唇口蓋裂患者へのホッツ床等の口腔内装置の調整および指導等
・マイクロスコープおよび歯科用CTを用いての根管治療の評価
・歯管等の文書提供等の要件見直し
・難抜歯を前歯と臼歯と分けての評価に
・補綴時診断料を装置毎の算定に
・平行測定検査等の見直し
・義歯新製から6カ月以内の床裏装を100分の50の点数に
・歯科用アマルガムの廃止等
調剤
かかりつけ薬剤師・薬局の推進
調剤薬局に対しても「かかりつけ薬剤師・薬局」の推進が打ち出され、「患者の服薬状況を一元的・継続的に把握した上で患者に対して服薬指導等を行う業務を薬学管理料として評価」するとしている。
また、「やむを得ない事情がある場合の分割調剤の活用」や「医師の処方内容に対する疑義照会に伴う処方変更の評価」なども挙がっている。
※今後、中医協での議論を踏まえて2月に改定内容が厚労省に答申される予定。
兵庫県保険医協会ウェブサイトの「診療報酬改定関連情報」に骨子全文を掲載