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第35回地域医療を考える懇談会「北神の地域医療の現状・課題」 地域密着の病院の重要性を確認 小児医療の課題など報告

2019.04.15

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(左上から時計回りに)報告者の奥谷先生、高田先生、森岡先生、貞弘先生が北神地域の医療の現状と課題について報告した

 病院統合計画を受けて地域の中核病院の役割を考えよう−−。神戸支部は3月23日、地域医療部と共催で第35回地域医療を考える懇談会「北神の地域医療の現状・課題〜病院統合計画を受けて〜」を神戸市北区で開催。北区の医師ら4人が、済生会兵庫県病院をめぐる課題や、北神地域の地域医療の現状などについて報告した。医師・歯科医師ら50人が出席し、地域医療の課題について議論を深めた。

 懇談会では、済生会兵庫県病院小児科部長の奥谷貴弘先生、北区・たかた内科クリニック院長の高田幸治先生、北区・さだひろこどもクリニック院長の貞弘信行先生、協会副理事長の森岡芳雄先生が報告。協会副理事長で神戸支部幹事の宮武博明先生(垂水区)が司会を務めた。
病院小児科の維持・継続に懸念
 奥谷先生は済生会兵庫県病院の医療体制や北区の人口・出生率などを紹介した。その上で、NICUのために8人の小児科医がいるが、ワクチンの効果による入院患者の減少や少子化により一般小児科の患者数が減少し、小児科が継続・維持できるのか不安があるなど、済生会兵庫県病院の小児科の現状と課題を報告した。
 少子化の背景には医療や福祉の予算削減により、安心して子どもを産み育てる環境が整っていないことがあると指摘。特にひとり親の貧困率が高く、分娩後のフォローの場面で困難を抱えることが多いと語った。そして「小児医療は保険点数が低いことから不採算部門とされ、民間病院には補助金もなく、継続が困難になっている」と問題点を示し、「二次病院を地域に確保することは必要であり、地域住民と力を合わせて声をあげていくことが大切」とした。
中核病院は保健の同志
 高田先生は「開業医から見た地域医療の課題と病診連携」について報告した。
 紹介率などの連携実績や各科の特徴、社会福祉事業など済生会兵庫県病院の特色を紹介し、月1回地域の開業医との連絡会を開催しており、病診連携はスムーズに行われているとした。
 病院統合で考えられるメリットとして、各科の充実により医師不足の解消や高度医療の提供が期待できる一方で、統合に伴う医療サービスの地域間格差の発生や、全く異なる組織形態の病院が統合することの難しさなどがデメリットとして想定されるとした。
病院や地域の開業小児科医が疲弊
 貞弘先生は「私と北神・三田の小児科のこれまで」をテーマに報告。
 地域に在住・勤務・開業した自身の経験から、北神・三田地域の小児科の歴史を振り返り、人口が急増する中、病院の整備が進んだが、時間外診療など病院小児科の負担が重い状況が続いてきたと振り返った。開業小児科医として中核病院に望むこととして、(1)必要な時に入院させてもらえること、(2)耳鼻科・眼科など境界領域各科の充実、(3)相談でき、最新の知見を教えてもらえる関係性、(4)地域の小児保健の同志の4点を挙げ、現状は、JCHO神戸中央病院で産科閉鎖・小児科医減少、済生会兵庫県病院で境界各科の医師不足など、多くの課題があるとした。
 病院統合計画が実現すれば、医師増等のメリットも考えられる一方、地域密着が薄れる懸念があるとし、何のため誰のための統合なのか明らかにすべきと訴えた。
政府の財政支出で医療・福祉の充実へ
 森岡先生は「進む病院統合〜地域に求められる病院とは〜」をテーマに、兵庫県下で進む病院統廃合の現状や国が進める政策について語った。
 病院統廃合には医師不足や高度専門医療の提供などの表向きの理由があるが、根本には国の医療費抑制政策があることを指摘。医療・介護・福祉・教育の削減をやめ、患者負担の軽減と診療報酬大幅引き上げを行うこと、医師数の絶対数不足を認め、医師の増員をはかることなどを保険医協会の提案として紹介した。
 懇談会には公立病院・私立病院・診療所の医師・歯科医師のほか、地域の住民も参加した。ディスカッションでは、北区で開業する医師や病院統合に反対する市民団体から市民不在の病院統合計画を憂慮する意見などが寄せられた。
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