兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

専門部だより

政策宣伝広報委員会だより

消費税増税中止求め県下各地で街頭宣伝 "増税困る"の声集め国会へ

2019.09.15

1920_01.jpg

シールアンケートで協力者と対話する坂口評議員(右)

1920_02.jpg

街頭で署名を集める西山理事長(左)

 消費税の10%への引き上げが、この10月にいよいよ強行されようとしている。協会が事務局を務める「10月消費税10%ストップ!兵庫県ネットワーク」は、増税反対の世論を高め、10%への引き上げを阻止しようと、9月4日、県下各地24カ所で街頭宣伝を実施。協会は、元町・大丸前で街頭宣伝を行った。一方で、厚生労働省は8月19日、消費税増税に対応する診療報酬改定について告示を行った。告示された、診療報酬の上乗せによる消費税増税への対応についての問題点を解説する。

 街頭宣伝は、西山裕康理事長、武村義人副理事長、坂口智計評議員が参加。道行く人に「2019年10月からの消費税10%中止を求める」請願署名への協力を呼びかけ、25筆が集まった。県下全体では854筆が集まった。
 西山理事長は「政府は消費税を増税し全世代型の社会保障改革を進めるとしているが、医療や介護では負担増が計画されている。消費税が増税されても社会保障の充実には回されないことは、消費税導入以後、所得税、法人税の減税に使われ、増税分が相殺されていることからも明らかだ」と訴えた。
 坂口評議員は「歯科では受診控え、治療中断などが現在でも起こっている。そんな中増税されると、経済的に苦しくなって治療を受けたくても受けられない方が増えてしまう。多くの署名で増税反対の世論を示そう」と訴えた。
 宣伝では、10月からの消費税増税に賛成か反対かを聞くシールアンケートも実施。アンケート協力者からは「社会保障も良くなるどころか悪くなる一方」「年金暮らしに増税は厳しい」などの声が出された。
 集まった署名は9月12日、国会議員を通じ国に提出した(次号に詳細を掲載予定)。街頭宣伝は9月28日にも元町・大丸前で開催予定。




政策解説
控除対象外消費税問題
診療報酬による補てんでは解決せず
協会政策部
 10月の診療報酬改定について、厚労省は告示で、消費税増税には診療報酬による補てんで対応するとした。医科で、初診料は現在から6点、2014年度改定前から18点引き上げられ288点、再診料は現在から1点、2014年改定前から4点引き上げられ73点となるなどの内容となった。
 今回の対応は、2014年度の前回消費税増税(5→8%)対応改定において「大きな補てんバラつき・過不足」等が生じているとの批判を受け、「精緻な」配点等を行うとともに2014年度改定(5→8%)対応分を再度見直し、消費税率5%から10%へ改めて対応したもの。
 改定では、医科診療所で第21回医療経済実態調査(2017年実施)に回答した全国1252医療機関のデータを利用し、2016年度の課税経費率を明らかにするとともに、それら医療機関のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から、消費税分補てん点数の年間合計を算出し、それらが同等となるように各基本診療料を引き上げた(図)。しかし、この方法では、医療経済実態調査に回答した医療機関の平均にあたる医療機関が2016年度と同じ設備投資等を行い、同じ医療行為を同じ回数行った場合に過不足なく補てんされるだけで、医療機関ごとに異なる課税経費や診療行為の回数等が反映されない。初・再診料以外の医学管理料等や在宅医療に係る診療料にも上乗せが行われているが、これらを算定している医療機関の課税経費率などは明らかにされておらず、その根拠は明らかでない。
 この手法は基本的に歯科でも同様である。結局、医科・歯科診療所の控除対象外消費税の補てん手法は2014年度改定とほぼ同じであり、「精緻化」には程遠いものである。
 そもそも、各医療機関種別、標榜科、年ごとで医療行為の回数や課税経費率は異なるため、診療報酬でそれぞれの医療機関にあわせた補てんなど不可能である。
 さらに、中央社会保険医療協議会(中医協)でも「個別項目に配点した結果改定が繰り返されて、補てん点数が分からなくなってしまった」と指摘されるように、診療報酬への補てんでは、その後の診療報酬改定による点数の引き下げや項目の廃止などにより補てん分が雲散霧消してしまうこともある。
 やはり、控除対象外消費税の解消には個々の医療機関が控除対象外消費税を申告し、還付を受ける課税ゼロ税率を実現するしかないのは明白である。
薬価改定では逆ザヤも
 薬価・材料価格については、算定式(新価格=「医療機関等への販売価格の加重平均値(税抜きの市場実勢価格)」×「1+消費税率(地方消費税分含む)」+調整幅・一定幅)に基づき、薬価改定も行われた。本来であれば消費税増税に伴い薬価は上がるはずだが、市場実勢価格にあわせた薬価引き下げが同時に行われたため、全体として▲0・51%となった。内訳は消費税対応+0・42%、実勢価改定等▲0・93%である。
 2012年の診療報酬改定までは、薬価・材料の引き下げ分は診療報酬本体に充てられてきた。この本体への振り替えは、1972年の中医協建議で提案され、厚生(労働)大臣や首相も公式にそれを尊重し、踏襲されてきたもので、97年には衆院厚生委員会で安倍晋三議員(当時)も同様の見解を述べていた。
 しかし2014年以降、今回も含めてそうした措置が採られなくなるとともに、調剤薬局の大手チェーン化等により、市場実勢価格は大きく引き下がった。こうした中、見かけ上は医療機関の持ち出しになっていないが、調整幅(薬価の2%)を確保できず、管理コストが持ち出しになってしまっている。薬価切り下げ分の財源を技術料の引き上げに充当するという措置を復活させるべきである。
消費税増税で受診抑制に拍車
 政府は、社会保障の充実のために消費増税が必要だというが、消費税を8%に増税した2014年以降、70歳から74歳の高齢者の窓口負担の2割への引き上げ、入院時の食事代や光熱水費の引き上げなど、患者窓口負担増を続けている。さらに、今後は75歳以上の窓口負担の引き上げや受診時定額負担などが計画されており、社会保障は充実どころか悪化するばかりである。
 実質賃金は伸びず、家計消費は低迷し、国民生活の格差と貧困は拡大している。協会の2015年の会員意見実態調査で、「経済的理由と思われる治療中断事例」があった医療機関は約6割だった。今回の増税で家計支出が増え、さらに窓口負担も増えれば、受診抑制が進み、国民の健康が守られなくなる。協会は今後も、控除対象外消費税問題は課税ゼロ税率での解決を求めるとともに、医療・社会保障の拡充を求める運動を進めていく。

図 厚労省は消費税負担分を補てんするとして初・再診料を5.5%引き上げるとした
1920_03.gif
勤務医部会だより 共済部だより 税経部だより 歯科部会だより 政策宣伝広報委員会だより 環境公害対策部だより 国際部だより 薬科部だより 保険請求Q&A 審査対策部だより 文化部だより 女性医師・歯科医師の会 融資制度のご案内 医療活動部だより