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主張 伊方原発運転差し止め仮処分 〝核〟は不要

2020.02.25

 「核」をめぐる情勢が大きく変化している。一つは国内の原発に関する動きだ。広島高等裁判所の森一岳裁判長は1月17日、四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分を決定した。同原発の運転を差し止める仮処分決定は高裁で2例目となった。原発の危険性と向き合った妥当な処分であろう。協会は、この決定を支持するメッセージを森裁判長に送付した。
 この仮処分決定から見えてくるのは原発の稼働を止めようとする市民の側の裁判のたたかい方の変化だ。これまでの裁判では、自然災害時に原発の安全性が技術的に保てるか否かを主な争点としてきた。しかし、今回は原発事故の前提となる地震や火山噴火など自然災害の頻度や規模の想定の適否について争った。結果、裁判所は原発から数百メートルの位置にある中央構造線が活断層の可能性があることや阿蘇山の噴火による降下火砕物の噴出量に関する四国電力の想定が過小であると断じた。
 この争点の変化は大飯原発の運転を差し止める判決を下した樋口英明元裁判長の指摘によるところが大きい。樋口氏は全国各地で耐震基準の面から「原発はとても危ない」と、自身が下した判決などについて講演している。引き続き樋口氏の力も借りて全ての原発の稼働停止と廃炉を求める運動を進めたい。
 また、原発の闇が国民の前に明らかになったことも大きいだろう。関西電力幹部らが福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていたことが明らかになるなど原発利権の構造に国民の不信感は高まっている。世論の高まりは司法を動かすことができるのである。引き続き私たちも司法に対して声を上げていきたい。
米国の核戦略の問題
 もう一つこの間の「核」をめぐる大きな動きは、アメリカの新型核兵器の実戦配備だ。この核兵器は広島型原爆の10分の1程度の威力とされておりアメリカは「使いやすい」と評している。アメリカは今でも核兵器使用を想定しているのである。
 今年は、核兵器禁止条約の発効の目処が立つ年ともいわれているし、春にはNPT(核不拡散条約)再検討会議がニューヨークで開催される。これに合わせて日本原水爆被害者団体協議会(被団協)やIPPNW(核戦争防止国際医師会議)など世界中の核廃絶を求める市民団体が集まり、ニューヨークで原水爆禁止世界大会を開催する。協会も代表を派遣して、核兵器廃絶に向けた世界の運動に連帯する決意である。
 放射線の人体への影響は、染色体の損傷や心臓疾患リスクの増加など多岐にわたる。原子力は現時点では人類の手に負えない。引き続き、私たちは日本政府に対し、福島原発事故を引き起こしたこと、世界唯一の戦争被爆国であることを自覚し、原発ゼロの実現と核兵器禁止条約への署名を求める。
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