政策宣伝広報委員会だより
第2回新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート詳報 深刻な受診抑制・風評被害明らかに
2020.07.05
協会が、4月に引きつづき実施した「第2回新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート」では、県で医療機関の受診抑制の深刻化や風評被害について明らかになった。結果について詳報する。
患者数の減少率の分布をみると、平均は医科医療機関で24.4%、歯科で29.2%となっている。また、21.4%の医科医療機関と、28.3%の歯科医療機関で、患者数が3割以上減少している。また、歯科では6割以上減少した医療機関が5医療機関あった。
標榜科別にみると、どの科も約8割から9割の医療機関で患者数が減少している。精神科や婦人科でも7割以上の医療機関で患者数が減少している(図2)。
標榜科別に患者数の減少率をみると、耳鼻咽喉科が前年同月比で47.8%減となっている。以下、小児科、歯科と続いている。新型コロナウイルス感染症の影響を受けないと思われがちな精神科や泌尿器科、外科でも約15%から20%減少している。
加えて、歯科の患者数減少は、歯科医療にとって欠くことのできない歯科技工所への委託技工数にも影響を与えている。昨年の4月と比較して、本年4月の委託技工数は「少し減った」と「大きく減った」を合わせて84%に上っている。
医科では具体的に「血糖、血圧、脂質異常などの慢性疾患のコントロール悪化」「認知機能、うつ症状、妄想、不眠、不安障害などの病状増悪」「胃カメラ検査の自粛により吐血し、緊急入院となった」「前立腺がんの骨転移受診遅れ、有症状者の受診控えによる進行がん例の増加」「大腸内視鏡検査の延期による大腸がん発見の遅れ」など深刻なケースが報告された。
歯科においても図4に見るれるように具体的なケースが報告されたが、患者のADLがより低下している「訪問診療」での疾病の進行、悪影響が大きくなっている。
費用の増加率は、平均で医科15.6%、歯科で16.1%で、費用が1割以上増加した医療機関は、医科で35.2%、歯科で40.0%だった。
アンケートの自由記入欄から、その要因についてみると、収益の減少は受診患者数の減少、初診患者、入院患者の減少、手術・検査の中止などが主となっている。費用の増加は感染対策費によるもので、マスクや消毒薬の価格高騰も影響を与えている。その他、従業員への危険手当、臨時ボーナスも医療費用の増加要因となっている。
誤解、勘違いだけでなく、無理解からの差別的言動やTV報道が受診抑制に大きく影響したという意見が、歯科に多く見られた。
また、そうした「体制整備のためにどのようなことが重要だと思いますか(複数回答可)」との問いには、「PCR検査体制の拡充」「個人防護具の十分な確保」と7割以上医科医療機関が回答している。また「感染時や休業時の補償」「抗原検査体制の拡充」「体制拡充のための予算」も半数以上の医科医療機関が重要としている。
また、多くの会員が大規模災害や感染症蔓延などの際に医療が縮小しないためには、平時より充実した、余裕をもった医療提供体制の整備が必要であると考えていることが明らかになった。協会では引き続き政府の医療費削減を目的とした医師数、病床数、医療機関数の抑制策の転換を求めていく。
前月より患者減は深刻に
病院、医科診療所、歯科診療所ともに、今回の調査では、前回調査より、前年同月比の患者数が減少した医療機関が増加している(図1)。特に歯科医療機関において、患者数の減った医療機関が、3月では46.7%だったのが、今回4月では93.8%に増加した。患者数の減少率の分布をみると、平均は医科医療機関で24.4%、歯科で29.2%となっている。また、21.4%の医科医療機関と、28.3%の歯科医療機関で、患者数が3割以上減少している。また、歯科では6割以上減少した医療機関が5医療機関あった。
標榜科別にみると、どの科も約8割から9割の医療機関で患者数が減少している。精神科や婦人科でも7割以上の医療機関で患者数が減少している(図2)。
標榜科別に患者数の減少率をみると、耳鼻咽喉科が前年同月比で47.8%減となっている。以下、小児科、歯科と続いている。新型コロナウイルス感染症の影響を受けないと思われがちな精神科や泌尿器科、外科でも約15%から20%減少している。
歯科で大幅に患者数が減少
歯科では前回調査に比べて大幅に患者数が減少している。その要因の一つとされているのが、厚生労働省が発出した「歯科医師の判断により、応急処置にとどめることや、緊急性がないと考えられる治療については延期することなども考慮すること」とする事務連絡である。この事務連絡に関しては、57%の歯科医療機関が撤回を求めている。また、自由記入欄には、マスコミの冷静な報道を求める声が多く寄せられた。加えて、歯科の患者数減少は、歯科医療にとって欠くことのできない歯科技工所への委託技工数にも影響を与えている。昨年の4月と比較して、本年4月の委託技工数は「少し減った」と「大きく減った」を合わせて84%に上っている。
受診抑制で疾患が増悪するケースも
「患者さんの受診控え等により、急性疾患の受診遅れ・慢性疾患の増悪等がありましたか」との問いには31.0%の医科医療機関、57.6%の歯科医療機関が「あった」と回答しており、歯科治療への悪影響がより大きくなっていることが分かった(図3)。医科では具体的に「血糖、血圧、脂質異常などの慢性疾患のコントロール悪化」「認知機能、うつ症状、妄想、不眠、不安障害などの病状増悪」「胃カメラ検査の自粛により吐血し、緊急入院となった」「前立腺がんの骨転移受診遅れ、有症状者の受診控えによる進行がん例の増加」「大腸内視鏡検査の延期による大腸がん発見の遅れ」など深刻なケースが報告された。
歯科においても図4に見るれるように具体的なケースが報告されたが、患者のADLがより低下している「訪問診療」での疾病の進行、悪影響が大きくなっている。
9割の医療機関が減収3割超で費用の増加も
今年4月の医業収益は、医科・歯科共に9割近い医療機関で収益が減少している(図5)。収益減少率の分布を見ると平均で医科が24.7%、歯科が28.6%だった。また医業費用も、昨年と比べて増加した医療機関が医科で31.6%、歯科で42.6%だった。費用の増加率は、平均で医科15.6%、歯科で16.1%で、費用が1割以上増加した医療機関は、医科で35.2%、歯科で40.0%だった。
アンケートの自由記入欄から、その要因についてみると、収益の減少は受診患者数の減少、初診患者、入院患者の減少、手術・検査の中止などが主となっている。費用の増加は感染対策費によるもので、マスクや消毒薬の価格高騰も影響を与えている。その他、従業員への危険手当、臨時ボーナスも医療費用の増加要因となっている。
多くの医療機関が内部留保を取り崩し
医療機関の収支悪化に対しての対応は、「内部留保、個人資産の取り崩し」が最も多く、医科・歯科ともに70%前後となっている(図6)。次に多い対応は「資金調達」だが、歯科でより顕著になっている。また2割前後の医療機関で、人件費削減も行われている。助成金手続きの簡素化と給付の迅速化を
患者数減少や収支悪化に対して、最も希望する政策は「助成金・給付金などの手続きの簡素化・迅速化」となっており(図7)、次に「診療報酬の引き上げ」があげられている。いずれも歯科からの希望が多く、普段から低診療報酬に苦しむ歯科医療機関にとっては、今回の収支悪化は深刻で、対策にスピード感を持たせることが必要である。深刻な「風評被害」
いわゆる「誹謗中傷」や「風評被害」について、「あった」と回答した医療機関は医科において10.4%、歯科において23.2%となっている(図8)。具体的には、「TVで、当院では新型コロナウイルス感染症患者がでていないのに病院名を放送され、電話での問い合わせが多数あり受付業務、診療に影響があった」「タクシーの乗車拒否、引っ越し業者の突然のキャンセル、職員家族の出勤停止、保育所の利用拒否等」「歯科治療をするとコロナにかかると言われた。否定しても歯医者は嘘つきで信じないと言われた」「スタッフの子どもが友だちから『やばい』と言われ、LINEから外され、引きこもりになった」など深刻なケースも報告されている。誤解、勘違いだけでなく、無理解からの差別的言動やTV報道が受診抑制に大きく影響したという意見が、歯科に多く見られた。
「第2波」に備え地域にセンター整備を
「大規模な『第2波』が訪れた場合、どのような外来診療体制が適していると思いますか」との問いには、半数以上の医科医療機関が、「各地域に専門の外来診療、検査のためのセンターを新設し、地域の医師が協力して対応」と回答している(図9)。また、そうした「体制整備のためにどのようなことが重要だと思いますか(複数回答可)」との問いには、「PCR検査体制の拡充」「個人防護具の十分な確保」と7割以上医科医療機関が回答している。また「感染時や休業時の補償」「抗原検査体制の拡充」「体制拡充のための予算」も半数以上の医科医療機関が重要としている。
保健所の体制強化を
「今後の新型感染症に備え、どういった医療政策が重要だと思いますか」との問いには「保健所等の体制強化」「検査会社と行政の連携」「治療薬等早期承認のための規制緩和」「民間医療機関の感染対策への支援」「感染症病床やICUの増床」と約半数の医科医療機関が回答している(図10)。感染症制御の基本は、早期発見、診断、隔離、治療である。検査、診断、治療をスムーズに行うため、それぞれのステージに適した、多層的な診療・連携体制の確保が求められている。平時から余裕をもった医療提供体制を
今回のアンケートから、受診抑制により一部の患者に短期的な健康状態の悪化が起こっていることが明らかになった。今後、中長期的な悪影響にも留意し、十分な分析と対策が必要である。また、多くの会員が大規模災害や感染症蔓延などの際に医療が縮小しないためには、平時より充実した、余裕をもった医療提供体制の整備が必要であると考えていることが明らかになった。協会では引き続き政府の医療費削減を目的とした医師数、病床数、医療機関数の抑制策の転換を求めていく。