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主張 骨太の方針2020 コロナ禍の今こそ医療費抑制方針の転換を求める

2020.08.25

 政府は7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。骨太の方針は、経済財政に関する政府の基本方針であり中長期目標も含めた各省庁の政策に反映させるための課題表であるが、副題の「危機の克服、そして新しい未来へ」が実にそらぞらしく響くほどの内容の薄さである。
 メディアもこぞって酷評している。読売新聞ですら「決意が見えない」と書き、朝日新聞に至っては、骨太の方針の存在意義そのものを問うていた。新型コロナウイルスにより、世界規模で人間の暮らしは一変し、既成のシステムの欠陥が顕在化した。今年の骨太の方針には大転換が求められ、非常に重要な意味を持つと誰もが感じたはずであるが、求められる内容とはかけ離れている。
 一番に掲げられたのは「新たな日常構築の原動力となるデジタル化」である。マイナンバー制度を医療などの社会保障分野以外にも自動車免許証にも使用するなどあらゆる分野で運用していくことが示された。
 しかし、コロナ禍で露呈した最大の課題は、これまで政府が「改革」を強力に推進してきた医療・介護体制の脆弱さである。にもかかわらず、骨太の方針2020ではなおも医療費抑制の方針に固執し、地域医療構想をさらに推し進めることを謳っている。
 イタリアの例を見るまでもなく、病院統合による病床削減は地域医療の崩壊を招き、災害や感染パンデミックには耐えられるものではないことが明らかになった。また、保健所の縮小政策による人員削減は、貧弱な検査体制や過酷な保健業務という弊害を招いた。記憶に新しいこれらのことをよもや忘れたわけではあるまい。
 発表にあたり政府は、これまでの骨太の方針継承を明言し、大企業の利益優先、社会保障抑制に固執する姿を鮮明にしているが、補償の裏付けのない行動規制で感染が防げなかった背景には貧困や格差という問題も存在することは明白である。しかし、「個人が輝き」「豊かさが実感できる社会」を謳いながら、自由と人権の保障ではなく国民の行動監視に傾注し、新自由主義路線をいっそう加速させる「骨太の方針2020」では、社会保障のセーフティネットから漏れる国民を救うことはできない。国民生活を守るとともに、医療機関の経営を補償するよう政策の転換を求めたい。
 未来どころかコロナ危機の克服もできない政府の姿勢に対して、明確に反対の意思を伝えるには行動で示すしかない。まずは協会が集めている「医療機関への緊急財政措置を求める」会員署名への協力を呼びかけたい。
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