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ストップ!負担増 政策解説(2)紹介状なしの病院受診の定額負担

2020.11.25

 政府が進めようとしている患者負担増計画の内容について、解説する本シリーズ。今回は「紹介状なしの病院受診の定額負担」をみていく。

 「紹介状なしの病院受診の定額負担」とは、紹介状なしで病院を受診する際に、通常の3割の患者窓口負担に加えて、一定額を患者から徴収する制度である。
 この制度は、もともと1996年に200床以上の病院の初診を対象に、2002年に再診を対象に、当時の特定療養費制度として創設され、各病院が通常の窓口負担に加えて各病院が決めた額を徴収することができると定められたものである。その後、2016年度診療報酬改定で特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院を対象に義務化され、2018年度改定で許可病床400床以上の地域医療支援病院にも拡大。2020年度には、200床以上の地域医療支援病院まで拡大された。
 この制度について、政府は全世代型社会保障検討会議の中間報告や、財政制度等審議会で「...対象病院の拡大、定額負担の増額を図るとともに、明確な形での医療保険財政へ寄与となるよう制度的対応を講ずるべき」とし、具体的には200床以上の一般病院を対象に加える検討をしている(図1)。
 これにより全国で688病院が、兵庫県でも16病院が新たに対象となる。徴収金額も、現在は最低金額として、初診5000円(歯科3000円)、再診2500円(歯科1500円)と設定されているが、政府はこの金額も引き上げようとしている。
 地域によっては、抱える疾患に対応する標榜科が近隣になく、病院に行かざるを得ないところもある。そうした、やむを得ない場合にも定額負担を強いることになる。
 新型コロナウイルス感染症で患者の受診抑制とそれによる疾患の増悪が問題となる中、患者に病院受診をいっそうためらわせる施策には問題があると言わざるを得ない。
 紹介状がなければ定額負担を課されることは、裏を返せば、お金さえ払えば病院を自由に受診できるということで、「軽症での大病院受診」以上のモラルハザードである。「フリーアクセス」を窓口負担金額で抑制することは、受診できる医療機関が経済力によって左右されるということであり、「格差医療」の容認である。
 また「増額分について公的医療保険の負担を軽減するよう」、「明確な形での医療保険財政へ寄与となるよう」としているのは、病院が患者から徴収した定額負担分について、病院が保険者から受け取る診療報酬をその分減額するということである(図2)。
 以上のことからも、医療費の抑制が政府の主目的であることは明白である。
 新型コロナ禍では、各国の医療提供体制の弱点が明らかになったが、日本でも医療費抑制のためにこの20年間で感染症病床が78%削減され、ICUもフランスやイタリアの半分程度しか整備されてこなかったことが明らかになった。今こそ、政府は医療費を増やし医療提供体制を充実させるとともに患者負担を軽減するべきである。

図1 病院受診時定額負担の対象拡大
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図2 定額負担分は病院の診療報酬を減額
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