政策宣伝広報委員会だより
政策研究会 「黒い雨と内部被曝-被爆者認定訴訟の問題点-」 「黒い雨訴訟」での司法の姿勢を批判
2020.12.15
長崎の被爆体験者が被爆者認定を求めた訴訟における、昨年12月の最高裁での原告敗訴判決。今年8月の広島の「黒い雨」訴訟地裁判決に対する国側の控訴など、政府は原爆症の認定を極めて限定的に運用してきた。こうした中、協会は11月28日、オンラインを利用し、長崎の訴訟を支え続けている本田孝也保団連理事・長崎県保険医協会会長を講師に、政策研究会「黒い雨と内部被曝-被爆者認定訴訟の問題点-」を開催。当日はオンライン視聴者も含め26人が参加した。
本田先生は、黒い雨の健康影響を裏付けるABCC(原爆傷害調査委員会)のレポートの発見やその過程で被爆者10万人への聞き取り調査データを放影研に公表させた経緯、また、米軍が原爆投下直後に現地での調査をまとめた「広島・長崎マンハッタン管区原爆調査団最終報告書」から長崎全体284地点の被ばく線量を明らかにしたことなどを解説した。その上で、長崎の被爆体験者訴訟での連続敗訴という結果を示し、ABCCや米軍の科学的な資料に基づいた訴えを受けても被ばく線量100ミリシーベルト以下では健康被害は生じない、内部被ばくは微量、被曝者の証言はバイアスがかかっているというのが、被爆体験者訴訟での福岡高裁の立場であるとした。
広島の「黒い雨訴訟」は地裁で画期的な判決で勝利しているが、国側の控訴により広島高裁でこの判決が覆されれば、福岡高裁の判決が黒い雨に対する日本の司法の確定した態度になってしまうと懸念を示した。
最後に福島第一原子力発電所事故後、文部科学省が小中高生向けの教材「放射線副読本」で内部被ばくの健康影響はないなどと記述していることを紹介し、放射線による健康への影響を軽視する日本政府の立場を告発した。