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政策解説 財務省「マイナス改定でも医療従事者の処遇改善は可能」に反論する(上) 財務省の暴論に署名で対抗しよう

2021.11.25

 来年度診療報酬改定の議論が本格化する中、榊原定征・日本経団連名誉会長が会長を務める財務省の財政制度等審議会財政制度分科会で、財務省が診療報酬マイナス改定やさらなる患者負担増を求めている。コロナ禍で明らかになった医療提供体制の脆弱性や、医療機関の経営難を全く顧みない財務省の暴論である。こうした政府内の動きに対抗し、大幅プラス改定を勝ち取るため、協会が取り組んでいる「医療提供体制を立て直すため診療報酬の大幅プラス改定等を求める医師・歯科医師要請署名」にぜひご協力いただきたい。

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「自然増」分があるから、プラス改定は必要ない!?
 11月8日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会では、これまでの診療報酬改定について、「医療等の分野では、...『自然増』として過去の伸びで延ばした金額が議論の出発点とされ、...必要な修正・適正化作業が『マイナス改定』などと呼ばれることで、水準の適正化が阻まれがちであった」とし、今回の予算についても「概算要求における...『自然増』要求...(は)、...診療報酬改定率に換算してプラス3%の要求がすでになされていることになる」「プラスマイナスゼロの改定を行った場合でも、...医療機関の収入としては5400億円増加するため、...すべての医療従事者を2.5%賃上げできるだけの原資が確保されている」と述べている。
 しかし、医療費の自然増は主に高齢化等に伴う患者の増加を見越したものであり、医療機関もそれだけ多くの診療を行うことになる。つまり増えた労働時間分の賃金や人員の確保に充当されるものであり、医療従事者の賃上げの原資が確保されているわけではない。コロナ禍で献身的に診療等にあたった医療従事者に対してあまりにも冷酷な対応と言わざるを得ない。
「伸び率管理」の導入
 また、分科会では、「結局は点数の傾斜配分に過ぎない診療報酬改定でもって医療費をコントロールすることも、医療機関の経営を安定させることも難し(い)」として中長期の給付費水準そのものの「伸び率管理」が必要であるとしている。これは、2年に1度の診療報酬改定を止め、医療費全体に上限額を決めるということを示唆している。これがなされれば、医療従事者の待遇どころか、患者に必要な医療を提供することすらできなくなってしまう。
「医療機関の経営実態は近年になく好調」!?
 分科会では、2020年度について「医療機関は...概算医療費の対前年度減少を補う以上の補助金収入を享受(している)」、21年度についても「推計した医療費の見込み」に「予算措置されている補助金収入を足した計数は47兆円程度と見込まれ、医療機関の経営実態は近年になく好調」としている。
 しかし、分科会が言う補助金は新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金や宿泊療養施設の確保等も含まれている。これらを医療機関の収益とするのはあまりにも乱暴である。そもそも、医療機関は新型コロナ対応のため医療機関の改修や感染防護具の確保で経費の増加を強いられており、例年と同水準の医療費が確保されていることのみをもって経営を好調だというのは誤りである。さらに、21年度に至っては、新型コロナウイルスの感染状況の変化を踏まえておらず、さらに未執行の補助金まで含めた推計であり、とても現実的な推計とは言えない。マイナス改定ありきで医療機関の厳しい経営実態を覆い隠す悪質なミスリードである。

(つづく)



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