政策宣伝広報委員会だより
第32回反核医師のつどいin兵庫
非核「神戸方式」の理念 世界へ
2022.10.15
9月24日~25日に、兵庫県保険医協会と兵庫県民主医療機関連合会が主催・企画して神戸市内で開催した、「第32回核戦争に反対し核兵器の廃絶を求める医師・医学者のつどい(反核医師のつどい)」の詳報を掲載する。
企画(1)
ノーベル平和賞を受賞した国際キャンペーン・ICANの金融セクターコーディネーターで、オランダのNGO・PAXのスージー・スナイダー氏がメインスピーカーとしてオンラインで講演し、核兵器製造企業から資金を引き揚げさせるキャンペーン「Don't bank on the bomb」について紹介した。
世界中の市民団体やメディア、金融機関の報告などをもとにして、核兵器製造企業についてPAXがレポートにまとめており、2019年1月から2021年7月の間に6851億ドルが核兵器生産者に提供され、日本でも、三井住友・みずほ・三菱UFJなど7金融機関が核兵器製造企業に投融資していることが明らかになっていることを紹介。核兵器を違法とする核兵器禁止条約の発効を受け、アイルランドの政府系ファンドが核兵器製造企業への投資をやめるなど効果を上げており、市民一人ひとりが利用している金融機関に対し、核兵器に関するポリシーを聞くことが、核廃絶につながると強調した。
近畿反核医師懇談会の松井和夫氏は、2019年の反核医師のつどいin京都以来、3回目となる金融機関調査結果を報告。PAXがレポートで核兵器製造企業に投資していると指摘されている5金融機関を含む7金融機関から回答があり、核兵器禁止条約について、回答があった金融機関はすべて「重視している」または「認識している」と回答し、条約を意識していることが明らかだとした。
また、PAXレポートに核兵器関連企業に投融資していると記載されている5金融機関とも、レポートに記載の事実は把握していたが、事実かどうかの回答は拒否していると紹介した。
松井先生は、調査を繰り返すにつれ、核兵器製造企業への投融資に関して、金融機関は禁止の方向で前向きに確実に変化していると報告。特に、ポリシーには反映されていないなど改善点は残るものの、りそな・第一生命は核兵器製造企業への投融資は行わないと明言しており、前向きに取り組んでいるように思われると分析。核兵器が使われる前に「核兵器のない世界」を実現させるため、投資撤収を急ぐ必要があると参加者に行動を訴えた。
企画(2)
立命館大学名誉教授の安斎育郎氏は、「『核共有』『核武装』『憲法9条改憲』で日本を守ることができるのか-非現実的な『現実主義者』たちの主張」と題し講演。
日本維新の会の藤田文武幹事長や安倍晋三元首相などが「核共有」(ニュークリア・シェアリング)の議論を呼びかける動きがあるが、明確に「非核三原則」に違反していると批判。その上、沖縄返還前、沖縄には核が配備され、事実上「核共有」が行われている状態で、キューバ危機のときはあわや沖縄から核ミサイルが発射されるところだったと紹介した。そのときはすんでのところで回避されたものの、実際に核兵器が使われかねないとした。
「核抑止論」には「いざとなれば使うことを前提としている」「いつ破綻するかわからない」「核兵器が使われたら、その被害は無制限に広がる」など、危険が多いと指摘。「核抑止論」から脱却し、一刻も早く核兵器を廃絶する他ないと訴えた。
また、ロシアとウクライナの戦争について、ウクライナがNATOに核基地を作ればロシアとしてはキューバ危機の再来であり、これにロシアが反対してきたのにもかかわらずアメリカが勧誘を続けたことなど、アメリカ・ウクライナ両政府がこの戦争の原因を作ってきたと話し、世論は「ロシア・バッシング」に傾いていると警鐘を鳴らした。
企画(3)「非核『神戸方式』」
原水爆禁止兵庫県協議会事務局長の梶本修史氏が、メインテーマである非核「神戸方式」について講演。非核「神戸方式」の原点は、戦前の川崎・三菱神戸造船所大争議に始まる神戸の港湾を中心とした労働者や市民の運動であると紹介。
戦後、米軍が駐留し、米兵による発砲事件や暴行事件などが市民生活を脅かしていた状況に対抗するため、61年から「基地なくし静かなクリスマスを」とクリスマス闘争が開始され、米軍の艦船が入港するたびに大規模なデモが行われ、1974年に全港湾施設が返還されたと述べた。
その後、革新市政の実現により、75年、神戸市議会で核兵器積載艦艇の神戸港入港拒否決議が行われ、神戸港の管理者である神戸市長が「非核証明書」の提出を軍艦に義務づける非核「神戸方式」が実現したと解説。結果、47年間にわたり、米軍艦は一隻も入港していないとした。
政府や米国からは断続的に攻撃が加えられるものの、非核「神戸方式」は世界にも広がり、ニュージーランドで87年に核兵器積載艦艇拒否の非核法が制定され、国連NGOミレニアム・フォーラムでも最終宣言に盛り込まれたことを紹介。
また、核兵器禁止条約で核兵器の配置、設置、配備の許可の禁止が定められた背景には、非核「神戸方式」があるとし、非核「神戸方式」が世界の核廃絶の流れに大きな影響を与えていると締めくくった。
オプションツアー
「非核『神戸方式』見学ツアー」と題し、神戸港からクルーズ船に乗船し、神戸港の現在の様子を知るツアーが行われ、梶本氏が解説を行った。
乗船前に参加者は「非核『神戸方式』の碑」を見学し、海上では修理のために神戸港に停泊している海上自衛隊の潜水艦や、原発を製造している工場などを見ることができた。参加者は熱心に梶本氏の解説に耳を傾けた。
シンポジウム
郷地秀夫・核戦争を防止する兵庫県医師の会代表をコーディネーターに、齋藤紀・福島医療生協理事長、小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教、石田仁・元大熊町副町長、広川恵一・兵庫県保険医協会顧問の4人が話題提供した。
小出氏は、福島第一原発事故の汚染の大きさを解説。「原子力緊急事態宣言」は今も続いており、事故は終わっていないと強調し、子どもたちを被曝から守るのが、福島第一原発事故を引き起こした大人の責任とした。
原発立地自治体である大熊町の元副町長である石田氏は、将来の健康被害への不安や、さまざまな分断と対立・差別、帰還できないこと・避難指示解除後の対応への不安、加害者側の不誠実な対応などにより被災者は疲れ切っているが、一方で、被災地は風化させられていると語った。
広川氏は、東日本大震災・福島第一原発事故後、被災地訪問を続けてきた経験を紹介。原発立地候補地となった岩手県田野畑村で、住民をまとめて計画を撤回させた「開拓保健婦」の岩見ヒサさんや、原発事故の賠償金で境内に反原発・平和の発信拠点「伝言館」を開いた宝鏡寺の早川篤雄住職など、被災地で生き、闘う人々の姿を紹介した。
斎藤氏は、原発事故という巨大な複合的被害のなかで、福島で臨床医として子どもたちの診療にあたってきた立場から、甲状腺がんの問題をどう考えるかを提言。
各種調査や研究結果から現時点では、福島原発事故による子どもの甲状腺がんの過剰発症は臨床的、疫学的に認められず、今後も罹患率レベルで放射線誘発性甲状腺がんとしての過剰発生は生じ得ない可能性が高いとした。そしてこれから生きる子どもたちを医学的に問題視し調査対象化し続ける社会的理由はなく、心配だからと求められての検査は当然行うが、学校健診として行うような無症状の子どもへの甲状腺エコー検診は回避するべきではないかと問題提起した。
その後、被曝の影響の評価や甲状腺検査のあり方等について、活発に意見が交わされ、郷地氏は、原発は人と相いれないこと、被災者に寄り添った支援が必要で国と東電が責任をとるべきこと、放射線の影響はデータの不確実さ等現時点ではわからないことも多く、不安な以上検査は医療人の役割で、それは国が保障すべきこと、現場の医療者を支えるのが他地域の医療者の役割であることをまとめとして提起して、確認された。
企画(1)
「Don't bank on the bomb?-核兵器にお金を貸すな-」
私たちの力で核廃絶は実現可能
ノーベル平和賞を受賞した国際キャンペーン・ICANの金融セクターコーディネーターで、オランダのNGO・PAXのスージー・スナイダー氏がメインスピーカーとしてオンラインで講演し、核兵器製造企業から資金を引き揚げさせるキャンペーン「Don't bank on the bomb」について紹介した。
世界中の市民団体やメディア、金融機関の報告などをもとにして、核兵器製造企業についてPAXがレポートにまとめており、2019年1月から2021年7月の間に6851億ドルが核兵器生産者に提供され、日本でも、三井住友・みずほ・三菱UFJなど7金融機関が核兵器製造企業に投融資していることが明らかになっていることを紹介。核兵器を違法とする核兵器禁止条約の発効を受け、アイルランドの政府系ファンドが核兵器製造企業への投資をやめるなど効果を上げており、市民一人ひとりが利用している金融機関に対し、核兵器に関するポリシーを聞くことが、核廃絶につながると強調した。
近畿反核医師懇談会の松井和夫氏は、2019年の反核医師のつどいin京都以来、3回目となる金融機関調査結果を報告。PAXがレポートで核兵器製造企業に投資していると指摘されている5金融機関を含む7金融機関から回答があり、核兵器禁止条約について、回答があった金融機関はすべて「重視している」または「認識している」と回答し、条約を意識していることが明らかだとした。
また、PAXレポートに核兵器関連企業に投融資していると記載されている5金融機関とも、レポートに記載の事実は把握していたが、事実かどうかの回答は拒否していると紹介した。
松井先生は、調査を繰り返すにつれ、核兵器製造企業への投融資に関して、金融機関は禁止の方向で前向きに確実に変化していると報告。特に、ポリシーには反映されていないなど改善点は残るものの、りそな・第一生命は核兵器製造企業への投融資は行わないと明言しており、前向きに取り組んでいるように思われると分析。核兵器が使われる前に「核兵器のない世界」を実現させるため、投資撤収を急ぐ必要があると参加者に行動を訴えた。
企画(2)
「人類的危機」引き起こさせるな
立命館大学名誉教授の安斎育郎氏は、「『核共有』『核武装』『憲法9条改憲』で日本を守ることができるのか-非現実的な『現実主義者』たちの主張」と題し講演。
日本維新の会の藤田文武幹事長や安倍晋三元首相などが「核共有」(ニュークリア・シェアリング)の議論を呼びかける動きがあるが、明確に「非核三原則」に違反していると批判。その上、沖縄返還前、沖縄には核が配備され、事実上「核共有」が行われている状態で、キューバ危機のときはあわや沖縄から核ミサイルが発射されるところだったと紹介した。そのときはすんでのところで回避されたものの、実際に核兵器が使われかねないとした。
「核抑止論」には「いざとなれば使うことを前提としている」「いつ破綻するかわからない」「核兵器が使われたら、その被害は無制限に広がる」など、危険が多いと指摘。「核抑止論」から脱却し、一刻も早く核兵器を廃絶する他ないと訴えた。
また、ロシアとウクライナの戦争について、ウクライナがNATOに核基地を作ればロシアとしてはキューバ危機の再来であり、これにロシアが反対してきたのにもかかわらずアメリカが勧誘を続けたことなど、アメリカ・ウクライナ両政府がこの戦争の原因を作ってきたと話し、世論は「ロシア・バッシング」に傾いていると警鐘を鳴らした。
企画(3)「非核『神戸方式』」
核持ち込みを許さない神戸市民のたたかい学ぶ
戦後、米軍が駐留し、米兵による発砲事件や暴行事件などが市民生活を脅かしていた状況に対抗するため、61年から「基地なくし静かなクリスマスを」とクリスマス闘争が開始され、米軍の艦船が入港するたびに大規模なデモが行われ、1974年に全港湾施設が返還されたと述べた。
その後、革新市政の実現により、75年、神戸市議会で核兵器積載艦艇の神戸港入港拒否決議が行われ、神戸港の管理者である神戸市長が「非核証明書」の提出を軍艦に義務づける非核「神戸方式」が実現したと解説。結果、47年間にわたり、米軍艦は一隻も入港していないとした。
政府や米国からは断続的に攻撃が加えられるものの、非核「神戸方式」は世界にも広がり、ニュージーランドで87年に核兵器積載艦艇拒否の非核法が制定され、国連NGOミレニアム・フォーラムでも最終宣言に盛り込まれたことを紹介。
また、核兵器禁止条約で核兵器の配置、設置、配備の許可の禁止が定められた背景には、非核「神戸方式」があるとし、非核「神戸方式」が世界の核廃絶の流れに大きな影響を与えていると締めくくった。
オプションツアー
神戸港の今を知り平和への思い新たに
「非核『神戸方式』見学ツアー」と題し、神戸港からクルーズ船に乗船し、神戸港の現在の様子を知るツアーが行われ、梶本氏が解説を行った。
乗船前に参加者は「非核『神戸方式』の碑」を見学し、海上では修理のために神戸港に停泊している海上自衛隊の潜水艦や、原発を製造している工場などを見ることができた。参加者は熱心に梶本氏の解説に耳を傾けた。
シンポジウム
「東日本大震災 -福島第一原発事故とその後」
原発は人と相いれないすべての被災者の補償を
郷地秀夫・核戦争を防止する兵庫県医師の会代表をコーディネーターに、齋藤紀・福島医療生協理事長、小出裕章・元京都大学原子炉実験所助教、石田仁・元大熊町副町長、広川恵一・兵庫県保険医協会顧問の4人が話題提供した。
小出氏は、福島第一原発事故の汚染の大きさを解説。「原子力緊急事態宣言」は今も続いており、事故は終わっていないと強調し、子どもたちを被曝から守るのが、福島第一原発事故を引き起こした大人の責任とした。
原発立地自治体である大熊町の元副町長である石田氏は、将来の健康被害への不安や、さまざまな分断と対立・差別、帰還できないこと・避難指示解除後の対応への不安、加害者側の不誠実な対応などにより被災者は疲れ切っているが、一方で、被災地は風化させられていると語った。
広川氏は、東日本大震災・福島第一原発事故後、被災地訪問を続けてきた経験を紹介。原発立地候補地となった岩手県田野畑村で、住民をまとめて計画を撤回させた「開拓保健婦」の岩見ヒサさんや、原発事故の賠償金で境内に反原発・平和の発信拠点「伝言館」を開いた宝鏡寺の早川篤雄住職など、被災地で生き、闘う人々の姿を紹介した。
斎藤氏は、原発事故という巨大な複合的被害のなかで、福島で臨床医として子どもたちの診療にあたってきた立場から、甲状腺がんの問題をどう考えるかを提言。
各種調査や研究結果から現時点では、福島原発事故による子どもの甲状腺がんの過剰発症は臨床的、疫学的に認められず、今後も罹患率レベルで放射線誘発性甲状腺がんとしての過剰発生は生じ得ない可能性が高いとした。そしてこれから生きる子どもたちを医学的に問題視し調査対象化し続ける社会的理由はなく、心配だからと求められての検査は当然行うが、学校健診として行うような無症状の子どもへの甲状腺エコー検診は回避するべきではないかと問題提起した。
その後、被曝の影響の評価や甲状腺検査のあり方等について、活発に意見が交わされ、郷地氏は、原発は人と相いれないこと、被災者に寄り添った支援が必要で国と東電が責任をとるべきこと、放射線の影響はデータの不確実さ等現時点ではわからないことも多く、不安な以上検査は医療人の役割で、それは国が保障すべきこと、現場の医療者を支えるのが他地域の医療者の役割であることをまとめとして提起して、確認された。