政策宣伝広報委員会だより
政策研究会「マイナンバーカード普及政策の問題点」
オンライン資格確認 義務化は患者の受療権を侵害
坂本団・弁護士が問題点を厳しく指摘
2022.11.05
元日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長で、現在は大阪大学大学院高等司法研究科客員教授も務める坂本弁護士は、そもそもマイナンバーカードは個人番号法17条で、本人からの申請を受けて市町村長が交付するとされており、取得は任意であると、法的な位置づけを説明。
政府がマイナンバーカードのメリットとして打ち出している、ICチップに入った電子証明書はすでに、99年に導入された住民基本台帳カードにも入っていたが、住基カードは全く普及せず失敗したと指摘。マイナンバーはその焼き直しとして、2016年から制度が導入されたものの、全く政府の意図したように普及が進まず、ポイントの付与や大規模な広報等、数兆円を費やし、無理やり普及させているのが現状と紹介した。
省令で義務化強制は問題
来年4月からの義務化が決められたオンライン資格確認について、今年5月の社会保障審議会・医療保険部会で突如提案され、9月には省令を改正するという拙速すぎるスケジュールであり、法律を改正せずに省令である療養担当規則で義務化を強制することは問題であると指摘。回線や機器の導入・維持費用、セキュリティの確保など医療機関に重い負担を与えるにも関わらず、大した利便性もなく、費用対効果の試算すら行われていない壮大なハコモノ行政であると強く批判した。さらに、政府が突如健康保険証の廃止を打ち出したことについては、あまりに唐突かつ拙速で省庁間の調整すらできていない疑いが強く、任意であるはずのマイナンバーカード取得の義務化に等しいと批判した。
本人確認一元化のリスクを指摘
また、マイナンバーカードを日常的に所持することによる券面記載事項の漏洩や不正利用の危険性、カードの紛失・盗難時には再発行までの間、医療機関を受診できなくなる可能性、さらに、運転免許証等すべてを一元化すると、再発行の際の本人確認手段がなくなるという問題も検討されていないなど、数々の問題点があると厳しく指摘。施設入所者など、マイナンバーカードを取得しない・できない人は必ずおり、オンライン資格確認義務化が対象外の医療機関もあるなかで、マイナンバーカードのみを保険証とすることは制度設計として不可能であり、紙の証明書は必ず必要になると、政府の計画の不備を指摘した。
そして、坂本氏は、オンライン資格確認義務化と保険証廃止は、患者の受療権や医療機関の経営の自由を侵害するもので、違憲・違法であり、問題提起のためにも訴訟の活用も選択肢として考えられるとした。