兵庫県保険医協会

　新型コロナウイルス感染症の第7波流行では、感染者の多くがワクチン接種後の「ブレークスルー感染」と推測されている。また、罹患後症状（いわゆる後遺症）やワクチン接種の副反応も少なくないなか、先進国では詳しい調査も広がっている。
　協会は、新型コロナウイルス感染後後遺症及びワクチン接種後の副反応に関して、県内の臨床医の考えを把握するため、「新型コロナウイルスの感染拡大に対する第9回アンケート調査」を実施、10月19日には、結果をマスコミに発表し、朝日放送、サンテレビ、神戸新聞、しんぶん赤旗が結果を報じた。
　協会は今回のアンケートをもとに、新型コロナウイルス感染後の後遺症やワクチン接種後の副反応に関して広範、詳細かつ積極的な調査体制の整備と患者への補償等救済措置の適用を求めていく。

詳報　第9回新型コロナ感染拡大に対するアンケート調査結果
第9回新型コロナ感染拡大に対するアンケート調査結果

　協会では、新型コロナウイルス感染後後遺症及びワクチン接種後の副反応に関して、県内の臨床医の考えを把握するため、「新型コロナウイルスの感染拡大に対する第9回アンケート調査」を実施した。結果の詳細を掲載する。

後遺症患者受け入れ4割以上の医療機関で

　回答した医療機関が対応した、全新型コロナウイルス感染者の割合に占める後遺症患者の割合は3.2％だった。
　また、後遺症患者の診療については、回答した医療機関のうち40.3％が受け入れていることが明らかになった。受け入れ医療機関を標榜科別にみると、耳鼻咽喉科、内科、外科、小児科、整形外科、精神科の順で多く（図1）、様々な標榜科が対応していることから、後遺症の症状の多様さが明らかとなった。
　具体的な症状として、味覚・嗅覚障害、ブレインフォグ、抑うつ、帯状疱疹等が挙げられた。

多くの診療科で副反応に対応

　ワクチン接種後に、直後の発熱・筋肉痛等の軽微なものを除いた副反応を訴えた患者は接種者の1.5％だった。
　副反応に対する相談を受けている医療機関は全体の35.2％に上った。標榜科別にみると、調査した12標榜科のすべてが副反応相談を受けており、整形外科、麻酔科、精神科といった、感染症診療と関係の少ない医療機関でも一定割合で相談を受けていることが明らかになった（図2）。
　具体的な症状として、全身倦怠感で就労不能、帯状疱疹、喘息発作の悪化、肩関節障害が挙げられた他、因果関係が証明できないものも含めて5人の死亡例が報告された。

第7波では大半がブレークスルー感染

　第7波のコロナ患者のうち、ワクチン接種後の患者の割合は、73.3％で、ワクチンの感染予防効果がそれほど高くないことがうかがわれる結果となった。
　今後のワクチン接種について意見を聞いたところ、「賛成」と回答したのは34.3％、「どちらかといえば賛成」が28.7％で、合わせて63.0％だった。「どちらとも言えない」は24.5％だった。「どちらかというと反対」は3.6％、「反対」が4.2％で、合わせて7.8％だった（図3）。小児の定期接種ワクチンでは、これほど反対意見がみられることはなく、臨床医の間で、新型コロナウイルスワクチンの有効性と安全性の評価が一致していないと言える結果となった。
　ワクチン接種について、重症化・死亡予防効果、感染予防効果について聞いたところ、それぞれ「ある」との回答は93.7％、64.1％だった。副反応リスクについては、「低い」との回答が82.9％に上った（図4）。
　ワクチンに関する自由記入欄には、「新型コロナ感染症は初期に比べ、重症感が格段に低下していると思う。この原因はワクチンの効果によるところも大きいと思う」という意見から、「接種者も非接種者も同じように罹患している。まったく効果はない。効果がないというか、接種者に有害事象が多発している」という意見まで様々なコメントが寄せられた。
　今回の結果より、「新型コロナウイルス感染後の後遺症」 「ワクチン接種後の副反応」に関しては、特に長期的に未知の部分が少なくなく、その解明のために積極的な調査体制の整備が必要であることが明らかになった。
　とりわけワクチン接種後の死亡例等に関しては、より詳細な調査を行い、補償等救済を積極的に行うべきである。
　また、今後のワクチン接種に関して、臨床医に十分な意見の一致が見られないため、国は、判断材料となる各種ワクチンの「有効性」と「安全性」に関して、その時々のデータに基づくエビデンスを明確にすべきである。