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緊縮財政を掲げながら、防衛力の抜本的な強化〈協会政策部〉 しわ寄せは社会保障に 政策解説「骨太の方針」

2024.07.05

 6月21日に「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定された。多くの問題点を含んでおり、主要な点について解説する。

緊縮財政と相反する防衛費の増加
 「骨太の方針」は、財政健全化を掲げながら、防衛力の抜本的強化をうたい、25年度のプライマリーバランス黒字化と債務残高対GDP比の引き下げをめざすとしているが、防衛費の大幅な増加が含まれている。この矛盾解消のために、防衛費財源については、必要に応じて法制上の措置が講じられる。
 一方、社会保障の給付と負担のバランス確保が財政健全化には欠かせないとし、増税と社会保障費の抑制が計画されている。結果として、国民に負担増と給付減が押し付けられる一方、日米の軍事産業の利益を増やすこととなるが、防衛力の急激な強化は、国際情勢の不安定化につながる危険性があり、極めて問題である。
混合診療のなし崩し的解禁狙う
 医療分野では、イノベーションの進展を踏まえた医療や医薬品を早期に活用するため、民間保険を利用する保険外併用療養費制度の在り方の検討が進められている。
 これは、新たな医薬品を保険収載せずに自由診療にとどめ、その患者負担を民間保険市場に差し出す構図である。事実上の混合診療の無制限解禁であり、安全性と有効性が確認されていない医療が保険診療と併用され、患者の負担が不当に拡大し、経済的能力によって受けられる医療に格差が生じる。
医師数削減を検討
 医師の地域間、診療科間の偏在を是正するため、経済的インセンティブや規制的手法が提案されている。診療所不足地域と過剰地域で異なる診療報酬を設定し、過剰地域の診療報酬を引き下げ、不足地域の診療報酬を引き上げる。
 また、地方の病院での勤務経験を求める管理者要件の拡大が示唆され、医師総数の不足が根本問題として残る中で、医学部定員の削減も検討されている。日本はG7の中で人口当たりの医師数が最も少なく、過重労働が続く可能性がある。
地域医療構想による開業規制も
 地域医療構想の対象範囲がかかりつけ医機能を含めた地域の医療提供体制全体に拡大される。
 これにより、地域ごとに外来・在宅機能の必要量を推計し、過剰な地域では新規開設を制限する権限が都道府県に与えられる。事実上、自由開業医制が否定され、行政の管理下に置かれる。
介護分野で数々の利用者負担増
 介護分野では、さらなる利用者負担増が検討されている。具体的には、2割負担となる一定以上所得の判断基準の見直し、ケアマネジメントの有料化、要介護1.2の人の生活援助サービスの給付対象外し化が含まれる。これにより、介護を必要とする人々が公的保険制度から遠ざけられる可能性がある。
歯科分野の改革
 歯科分野では、いわゆる国民皆歯科健診の推進、歯科衛生士・歯科技工士等の人材確保、歯科保健医療提供体制の強化や新技術・新材料の保険導入の推進などが記載されているが、実現性を伴う具体策とともに、何よりも歯科医療の総枠拡大が求められる。
医療情報の企業利用すすめる
 「骨太の方針」は、全国医療情報プラットフォームの構築を提案している。
 このプラットフォームで共有される情報は、医療技術の開発や創薬のために利用されるが、医療現場での優先順位は低く、情報漏洩のリスクや患者の自己情報コントロール権の侵害が懸念される。
国民生活に厳しい影響問題点知らせよう
 「骨太の方針」は、国民生活に大きな影響を与えるが、財政健全化と防衛費増加の矛盾、医療・介護分野の負担増や質の低下、医療情報の取り扱いに関する問題点を含んでおり、国民に厳しい選択を強いるものとなっている。

骨太の方針2024に盛り込まれた項目(抜粋)
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