歯科部会だより
9/11歯科定例研究会「『自家歯牙移植とその周辺』-歯根膜の活用で臨床を変える-」感想文
2011.10.04
歯科部会は9月11日、協会会議室で歯科定例研究会「『自家歯牙移植とその周辺』―歯根膜の活用で臨床をかえる―」を開催。東京都国立市・しもじ歯科クリニック院長の下地勲先生を講師に、63人が参加した。参加者の感想文を掲載する。
下地勲先生の講演に参加させていただき、先生の卓越した臨床と理念に改めて深く感銘を受けた。
最近、あまりにも簡単に歯を抜かれているのではないか、ブームとも言えるようなインプラントのめざましい普及が安易な抜歯に拍車をかけているのではないか、ということを先生は心配されている。
先生はインプラントの有用性も十分認めておられ、実際、保存の危うい歯や歯列を守るためというスタンスで使用され、長期の術後経過で素晴らしい成果をあげておられる。
しかし、インプラントは基本的に生体にとって異物なのに対して、移植歯は生体の一部である。移植歯にはインプラントにはありえない生物学的特性を持った歯根膜が存在する。
歯根膜の存在は、その再生機能により歯周組織全体を改善させることが可能であり、また、歯根膜の感覚機能により、強すぎる咬合力をコントロールできる可能性を持っている。
歯根膜がもつ生物学的機能を活用し、天然歯をとことん保存する。その理由を、下地先生は基礎理論とともに、多くの長期経過症例であざやかに示してくださった。
「歯を抜くかどうかの診断ではなく、歯根膜を残せるかどうかの診断をしてください。」「歯根未完成歯の移植は、子どもの歯を守る歯科医師の義務です。」
下地先生の患者様へ対する温かい姿勢、長年にわたり追求されてこられた天然歯へのこだわりが伝わる素晴らしい講演会であった。
【西宮市・歯科 末武 伸敏】