歯科部会だより
6月歯科特別研究会「口腔がんの診断と治療および周術期口腔機能管理について」感想文
2012.08.23
「がんの基礎から診断・治療まで」
歯科部会は6月3日、歯科特別研究会をラッセホールで開催。「口腔がんの診断と治療および周術期口腔機能管理について」をテーマに兵庫医大歯科口腔外科主任教授の浦出雅裕先生が講演し、40人が参加した。参加者の感想文を紹介する。
本年度の歯科診療報酬改定で、病院と連携し、がんなどの全身麻酔下の手術等を行う患者を対象にして「周術期口腔機能管理」が新設されたことを受けて、口腔がんの第一人者である浦出雅裕先生を講師に迎え、講演していただいた。
がんは3人に1人が罹患し、死因別死亡率が最も高い疾患である。そのためメディアに取り上げられることも多く、一般の方々の関心が高い。にもかかわらず、われわれ歯科臨床医が接する機会は多いとは言えない。そのため見落としがあってはならないと常々感じていた。そんな折に、浦出先生の講演を開催していただいて、感謝している。
講演は、先生の長年の経験と研究に立脚されたすばらしい内容だった。たくさんのスライドを用いて、口腔がん発生のメカニズムから今後の展望までの6項目を、われわれ臨床医にもわかるように、項目ごとにがんの基礎からかみ砕いてご講義をしていただいた。
前がん病変の白板症は5~10%、紅板症で40~50%とがん化率が高く、前がん状態には扁平苔癬や粘膜下線維腫等があるが、がん化率は前がん病変の10~100分の1と低い。これらは、日常診療でときどき目にするので非常に有意義だった。
診断においては「一見して『汚い』・難治性の潰瘍で周りに『しこり』がある、というのが典型的な悪性腫瘍の特徴である」と開業医が診査する際のポイントから始まり、PET―CT、病理診断までと、そしてTNM分類等による悪性度診断が治療法の選択の重要なポイントとなることをお話いただいた。
治療法としては、外科療法、放射線療法、化学療法、それぞれの利点と欠点を。そして最新の超選択的動注化学療法を併用した放射線療法から粒子線治療までを、詳しいスライドを使って紹介いただいた。
最後に、今後の展望として、関連医科との集学的治療は必須である、と締めくくられた。
治療法等は、開業医には専門的であったが、基礎から診断、悪性度等はがんの理解を深めるのに非常に有意義であった。
浦出雅裕先生におかれましては、ますますのご活躍と、病診連携、私どもへのご指導をよろしくお願い申し上げます。
【三田市・歯科 小寺 修】