歯科部会だより
5月歯科定例研究会「接着ブリッジ-最小限の生体侵襲による効果的な少数歯欠損補綴法-」ご案内
2013.03.25
5月歯科定例研究会 ご案内
接着ブリッジ
-最小限の生体侵襲による効果的な少数歯欠損補綴法-
日 時 5月12日(日)14時~17時
会 場 兵庫県保険医協会会議室(神戸フコク生命海岸通ビル5階)
講 師 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座クラウンブリッジ補綴学分野
矢谷 博文先生
定 員 120人(事前申込順)
参加費 会員無料
*協会未入会の先生は、この機会にご入会の上ご参加下さい
接着ブリッジは、わが国において優れた接着性レジンが製品化されたのを機に、昭和58年頃から歯質を削除する必要のない夢のブリッジとして、瞬く間に全国の一般臨床家の間に広まったが、そのうちにすぐ外れてしまうという悪評が立ち、風船がしぼむようにブームが去ってしまったことは、この頃から臨床に携わっていた先生方はよくご記憶のことと思う。しかしながら、それで接着ブリッジに関する臨床も研究も行われなくなってしまったかというと決してそのようなことはなく、世界中で地道な基礎研究ならびに臨床応用が続けられ、いまや接着ブリッジは少数歯欠損補綴法の一オプションとしての地歩を完全に固めた感がある。
接着ブリッジの研究と臨床に長年携わってきたものの立場からすると、日本が世界をリードしていたせっかくの補綴技術が日本の臨床家たちから不当に過小評価されてきたことには内心忸怩たる思いがあった。しかしながら、昨春の保険改定で前歯接着ブリッジに続いて臼歯接着ブリッジが保険導入されたことは、わが国の接着歯学のレベルの高さがようやく評価されたことを意味しており、まことに喜ばしい慶事である。
この保険導入は、2006年10月に特定療養費制度として特定承認保険医療機関(大学病院など)で行われていた高度先進医療が廃止されたのを受けて、それまで行われていた高度先進医療を保険導入するかどうかについての見直しが行われたことが一つのきっかけとなった。すなわち、岡山大学、長崎大学、広島大学、鹿児島大学で実施されてきた高度先進医療「接着ブリッジによる欠損補綴ならびに動揺歯の固定」の臨床成績が一定の評価を受けたこと、および2007年4月に日本補綴歯科学会から「接着ブリッジのガイドライン」が出され、接着ブリッジの臨床エビデンスがまとめられたことが今回の保険導入につながったものと考える。今後心配なことは,臨床家の接着ブリッジに対する知識や技術の未熟さから、過去と同じ轍を踏んで接着ブリッジがわが国の臨床に定着しないことである。その意味において今回の講演を企画していただいたことは誠に時宜を得ている。
今回の講演では、文献からどのような接着ブリッジに関する臨床エビデンスが抽出されているかについて説明し、多くあることが想像される接着ブリッジに対する臨床的誤解を少しでも払拭できればと考えている。【矢谷記】