歯科部会だより
<感想文>7月歯科定例研究会「イエテボリ診断学入門」
2013.08.30
患者さんへの聞き取りを大切に
歯科部会は7月14日、歯科定例研究会「イエテボリ診断学入門 誰も教えてくれなかった診断学、入門から学ぼう!」を協会会議室で開催、EPSDC歯内療法・歯周病専門医の宮下裕志先生を講師に80人が参加した。参加者の感想文を掲載する。
このたび、東京でご開業されている宮下裕志先生の診断学についての講演を受講したのでご報告します。
「日本の歯科医学では、まだまだ『診断学』 という言葉は馴染みがない」から始まり、全ては患者さまの訴えの聞き取りからどのようにして 「Drill and Fill からHeal and Sealへ」 に至ったかを詳しく、そして聞きやすく教鞭していただきました。その中には、講師のイエテボリ大学での診断の専門医を取得されたからなのか、Cochrane Collaboration(コクラン共同計画)に参加されていた経歴からなのか、Evidenceを一つひとつ吟味されて臨床に取り組んでいることに驚嘆しました。
また、治療としての考えの中には『患者を管理する』ことが大切であることを学びました。従来型の歯周疾患の管理はリペアモデル(患者さん自身のリスクを減らすことを考えていなかった)でしたが、齲蝕のリスクをコントロール(管理)するのは患者自身です。その患者を管理することができなくては疾病は良くはならないということが理解できます。そのためには、患者が主訴を訴えて来院する日からが重要です。
通常の私の医院での臨床では、患者の主訴となる「歯が痛い」という訴えひとつでここまでの診断の広がりが考えにくい。その考えを広げ患者の声に向かい合うためには、歯科医院のシステムを見直すことが必要なのであることも学びました。
『診断とは?』の話の中では、「診断とは次に何をすれば良いかを考えておくこと」だと教えていただきました。次にどんなことがおこるのか?「こうすれば絶対に大丈夫」といったことはなく、臨床における一つひとつが診断なのだということを学ばせていただきました。
リスク(損害)とベネフィット(利益)を常に両天秤にかける処置をすれば、常に診断にいい結果を得られるのか?悪化したのか?リスクの確率が高い疾患は診断がしやすく、確率が低い疾患は診断がしにくいことの意味も知ることができました。
最後に、治療のオプションには患者の診断が重要となります。どんなタイプの患者が疾患をもっているかが重要です。また、そのためには患者への医療面接が重要な役割を担っています。
明日からの臨床では、すぐにとりかかることのできる『診断』にもっと時間をかけ、患者の声を聞き取れるようになることから始まるのだと思いました。 【姫路市・歯科 溝井 優生】