歯科部会だより
<感想文>8月歯科定例研究会「歯科をめぐる最近の医事紛争」
2013.09.04
相手の感情を理解し、丁寧に対応を
歯科部会は8月4日、協会会議室で歯科定例研究会「歯科をめぐる最近の医事紛争」を開催。米田泰邦法律事務所の鵜飼万貴子弁護士を講師に、48人が参加した。参加者の感想文を掲載する。
先日とある雑誌で、学校でのPTAの会議にてボイスレコーダーが持ち込まれ、議事録としてだけでなく、いわゆる「言った、言わない」の争いにならないための抑止力の効果が期待されている、という記事があった。せちがらい世の中である。
われわれの医療現場も、こちらの説明不足、相手の勘違い、思い込み、また治療の正否で思わぬトラブルに発展する可能性を秘めている。今回、鵜飼弁護士の講演では、いかにこれらの発生を未然に防ぎ、図らずも起きた場合の対応と対策、結果等について解説をいただいた。内容は以下の通りである。
近年の医療訴訟において歯科の件数が着実に増加している背景には、弁護士数の増加やインプラントなどによる請求金額の増加がある。
民事損害賠償請求で検討されるのは「過去・因果関係・損害」の有無であり、特に説明義務について注意すべきである。裁判所が判断の拠り所として重視しているのは当然カルテであり、たとえていねいに説明していたとしても、カルテに記載がなければ立証することはできない。カルテ記載のポイントは客観的・具体的・冷静に真実を書くことである。
医療事故が起こった際、賠償責任保険に連絡することは大事だが、まずは相手の感情を理解していることを示すことが先である。事実が不正確なうちは法的な非を認めて謝罪してはならないが、事の重要性を真摯に受け止め、責任ある対応を誓うことが肝要である。
これらの複数の具体的な案件を提示しながら、最前線での臨場感あふれる話をしていただいた。第2回、続編を期待したいすばらしい内容であった。 【西宮市・歯科 小田 泰史】