歯科部会だより
<感想文>11月歯科定例研究会「インプラント治療のトラブルを回避するための鉄則とは?」
2014.01.28
<感想文>
2013年11月歯科定例研究会「インフォームドコンセント 患者のことを第一に」
歯科部会は11月10日、協会会議室で歯科定例研究会「インプラント治療のトラブルを回避するための鉄則とは?」を開催。芦屋市・野阪口腔外科クリニック院長の野阪泰弘先生を講師に55人が参加した。司会を務めた谷井博美先生の感想文を掲載する。
インプラントが治療の選択肢の一つになってから、当診療所にトラブルを抱える患者が多く来院するようになってきた。その患者たちは元の主治医の先生のところには行きたくないと言い、私を悩ませる。まずインプラントのメーカーと種類等を調べるため、元の主治医の先生に電話をかける。それが解ったら、そのインプラント治療後、使用したインプラントの種類を記載したカードを患者に持たせることができないものかと考える。
なぜこんなことになるのか考えると、野阪先生が講義中に何度もおっしゃっていた〝患者へのインフォームドコンセント〟に問題があるのではないかと感じた。
インプラント治療に対する患者の理解、費用、全身状態のチェック、リスクの説明、そして何より大事な診断、予後の説明をして、インプラント治療を希望するが、その適応症でない患者にはインプラント治療はできないと勇気を持って伝える。とくに診断と予後は非常に大きなことだと思う。
しかし、インプラント治療がうまくいけば〝人生が変わる〟と言われるほどQOLが上がり、患者の笑顔を見ることができる。その反面、うまくいかない時の患者の様子を想像すれば、インプラント治療は「諸刃の剣」とも言えると思う。
われわれは生体の中で最も硬い組織から特殊な顎関節、そこから来る複雑で繊細な咬合、さらに難解な神経・筋機構を扱う領域を受け持つ。野阪先生曰く、〝骨は生きている〟。インプラントはその骨に人工物を植立する治療であること、患者にあった咬合を作らねばならない立場にある。
インプラントの講義といえば主に術式に関することが多かったと思う。野阪先生の講義は哲学に重きを置く話で、それがトラブルを回避できる道筋であると言われたと思う。日常の臨床で忙しさに忘れがちなことで身の引き締まる思いだ。
貴重な時間を持てましたこと、ありがとうございました。 【中央区・歯科 谷井 博美】