薬科部だより
薬科部5月研究会「2型糖尿病治療薬の展開」感想文
2011.06.05
病態に即した薬剤選択を学ぶ
協会薬科部は5月14日、県農業会館で薬科部研究会を開催した。「2型糖尿病治療薬の展開~DPP-4阻害薬と高用量メトホルミンを中心に」をテーマに、神戸大学大学院医学研究科助教の坂口一彦先生が講演し、会員・薬剤師ら111人が参加した。参加者の感想文を紹介する。
会場に補助席を用意するほど盛況の中、坂口先生の講演は「ヘモグロビンA1cを下げれば良いという糖尿病治療の時代は終わった」と衝撃的な内容でスタートした。
有名なイギリスの介入試験でヘモグロビンA1cと総死亡率が相関しなかったことは、低血糖と引き換えに良好な血糖コントロール値を得ていたのでは? しかも高齢者の重症低血糖は認知症につながるとのデータもある。質の高い血糖コントロールの第一は、低血糖を起こさないことにある。
次のキーワードは体重。厳格な血糖管理をすれば、インスリン作用から体重は増加する。体重増加は種々の原因による死亡率上昇と関連している。体重増加をきたさない薬剤選択の意味は大きい。メトホルミンは国際ガイドラインでも腎障害がある場合を除き、第一選択薬とされている。
そして、3番目の質の高い血糖コントロールとは、血糖の日内変動を減少させること。ヘモグロビンA1cが同一でも、グルコーススパイク変動幅が大きいグループは、心筋梗塞が3倍になる。
そして、4番目が過度の高インスリン血症をきたさないこと。高インスリン血症は冠動脈疾患の重症化に関連している。そしてがんとの関連も…。
インクレチン関連薬の有用性は、少ないインスリンで効果的に血糖値を低下させることにあり、それは質の高い血糖コントロールの5番目、膵β細胞保護作用を有することにも通じる。
これらの基礎を学んだ後、経口治療薬の位置付けと副作用の理解を図解していただいた。これが大変わかりやすく、頭の中がすっきりと整理できた。
今後も増え続けてると言われる2型糖尿病。その治療薬について、最新の情報を学び続けることは、私たち薬剤師にとって、大切な課題であると思った。たくさんの資料やデータを示してわかりやすくお話くださった坂口先生にお礼申し上げます。
【尼崎市・薬剤師 滝本 桂子】