税経部だより
開業医に当面必要なマイナンバー事務
2015.10.25
開業医に当面必要なマイナンバー事務
協会税務講師団 浦上立志 税理士
「マイナンバー」の通知が始まり、いよいよ具体的な対応を迫られる時期となった。協会は、この制度が国民管理と社会保障費抑制に使われる危険性とともに、情報漏えいのリスク、民間事業者に多大な負担と責任を課す点などの問題点を指摘し、慎重な検討と対応を呼びかけてきた。制度開始を前に、医療機関での事務的な対応のポイントを協会税務講師団の浦上立志税理士に解説してもらった。
「マイナンバー」は国のための番号
「マイナンバー法」は行政機関等を「個人番号利用事務実施者」と、個人番号を記載した源泉徴収票などの書類を提出したりする開業医など民間事業者を「個人番号関係事務実施者」と定めています。つまり、 「マイナンバー」の利用者は行政機関等であり、行政のための番号です。 国や行政のための番号を民は誤りなく管理せよと義務づけたのが「マイナンバー法」の本質です。
通知カードが届いたら
2015(平成27)年10月5日時点で住民登録のある方全員に、市町村から簡易書留で世帯主宛に紙の番号通知カードが届きます。名宛人が受け取らなければ、転送もされず役所へ戻ります。宛先不明者を把握するためです。 通知カードには、住所の他4情報が記載されています。12桁のマイナンバー、氏名、生年月日、性別です。通知カードが届いたら家族分も含めて大事に保管してください。
個人番号取得時には
11月初めに税務署から2015(平成27年分)年末調整のための書類が来ます。このうち2016(平成28)年分扶養控除等申告書に番号記載欄があります。扶養控除を受けない年少の親族、第三号被保険者である配偶者の登録がある場合、その方の番号も必要です。 2016(平成28)年1月以降、事業主が従業員の源泉徴収や社会保険の手続きなどを行う場合、原則としてマイナンバー記載が必要とされています。その際、扶養控除等申告書に記載されたマイナンバーを利用することは可能ですが、扶養控除等申告書に記載してもらう際に、他の役所等に提出する書類にも利用すると伝える必要があります。
本人確認と個人番号の正誤確認
番号の取得時には本人確認と個人番号の正誤確認を行わなければならないとされています。その番号が確かに本人のものでなければ正しい情報蓄積にならないからです。写真付きの運転免許証などで確認せよとされていますが、元から勤務していて履歴書等で確認済みの人は略してよいとされています。 番号の正誤確認のために通知カードをコピーすることは、強制はできませんが差し支えありません。しかし、コピーすればそのコピーの保管についても管理責任が生じます。 「記入は間違わないでくださいね」と職員に伝え、それも含めて自己責任とするのが小事業では合理的です。つまり、扶養控除等申告書だけで職員の個人番号を管理するということです。
個人番号の記載がない書類はどうなるか
では、番号記載のない書類は無効となるのでしょうか。 開業医など「個人番号関係事務実施者」は、書類の提出にあたり個人番号の提供を求めることができるにとどまります。当人の事情による不記載は責任を問われませんし、番号がなくても受け付けられます。ただし、提供を得られなかった経過等は記録しておきましょう。