税経部だより
平成27年分 確定申告を終えて
2016.04.15
平成27年分 確定申告を終えて
協会税務講師団 税理士 浦上立志
1.医療機関の経営
平成27年は花粉症の低迷期で、関係する診療科のクリニックでは経営にも影響があったようです。花粉頼み、風邪頼み経営はGDPの成長減速を季節要因に求める政府見解のようで気がひけますが。
所得拡大税制として、スタッフを増やし待遇をアップすれば、給与の増加額の10%を税額控除できるアベノミクスによる政策誘導がありました。ところが、これは思いの他適用が多くありません。これまでの人件費の枠内でやりくりしている様子がうかがえます。生産性向上に資する設備にかかる減税策もありましたが、活用されたのはもともと買い換え時期だった電子化備品程度のようでした。
世間の傾向と同様、医療機関でも積極的な雇用拡大や設備投資に動ける状況ではないようです。
2.株損失の繰越
アベノミクスの恩恵は医師・歯科医師に及んでいるでしょうか?
平成26年までの上場株式等の譲渡損を繰り越してきて、27年分では配当所得とあわせてある程度の利益が出て、相殺による還付を受けた方が多かったようです。よかったと言える反面、まだまだ下がったままの株もあり、3年間の損失の繰越控除ができる内に何とかしたいと思わせる税制となっています。「貯蓄から投資へ」という政策誘導ですが、一度株の世界に入り込めばやめられない、麻薬的しくみだと感じられます。
3.社会保険料の高額化
医療費控除が多くなっていることから、医療費の自己負担額が大きくなっていることが見えてきます。また、社会保険料の負担も高額化しています。
後期高齢者医療保険の保険料など個人の公的年金等から特別徴収される保険料では、例えば扶養している妻の負担する保険料を先生本人の所得から控除することはできないため、税負担が重くなります。同一世帯の所得の高い人が保険料を負担し、社会保険料控除を受ければ全体としての税負担は軽くなります。実質的な保険料の負担者は所得の大きい人なので、控除できないのはおかしいという批判もあり、この点は政府に見直しの動きもあります。今後の動向にご注目ください。