税経部だより
税経部より 2023年分の確定申告の特徴
税理士 松田 力
2024.04.15
1.確定申告現場の実情 デジタル化の注意点
ここ数年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により確定申告に関しても様々な特例が設けられていましたが、2023年分の確定申告に関しては新型コロナウイルス感染症拡大前の状況に戻りました。この間、確定申告についてもデジタル化が進んでおり、デジタル化が進むことにより便利な部分は増えていると思いますが、不利益な部分も散見されます。
①確定申告会場は入場整理券がないと入場ができません。入場整理券は当日配布となっており、配布状況によっては当日に確定申告会場に入れない(後日の来場となる)こともあります。また、入場整理券はLINEを通じたオンライン事前発行ができます。LINEができない方については、何度も税務署に足を運ばないといけない可能性があります。
②スマートフォンで確定申告ができる範囲が拡大しています。確定申告会場でも、まずはスマホ申告が案内されます。e-Taxやスマートフォンで申告書を作ると自動計算をしてくれるので便利ですが、そもそも入力する欄を間違っているという申告書が見受けられます。システムが自動でやってくれていると思うと大きな間違いが発生する可能性があります。
③マイナポータルからの連携による申告書の自動入力の対象が拡大しています。こちらもきちんと自動で連携をしてくれれば非常に便利かとは思います。しかし、連携がうまくいっていないので自動入力がされていない、自治体側の設定ミスにより情報がマイナポータルにアップされていなかった、家族の分が連携できない、という事象が発生しています。
デジタル化が進むと非常に便利ですが、使い方を間違えると誤った申告となります。最後はアナログ(紙)で確認することも必要です。
2.オンライン資格確認システム導入の補助金の取り扱い
2023年は、医療機関の多くでオンライン資格確認装置を取得したことにより補助金を受領しているかと思います。補助金に関しては、『国庫補助金等の総収入金額不算入』の規定の適用を受けることにより、特に措置法26条を適用している医療機関は節税になります。『国庫補助金等の総収入金額不算入』の規定の適用を受けるには確定申告書に明細書を添付する必要がありますので注意が必要です。
3.インボイス登録番号の記載は必須ではない
青色申告決算書の3ページ目に、「売上(収入)金額の明細」「仕入金額の明細」という欄が新たにできました。この欄には取引先のインボイスの登録番号(法人番号)を記載する項目があります。手引きでは、『登録番号又は法人番号を把握している場合にそれぞれ記入します』と記載があります。把握していなければ記載する必要はないのですが、国税庁は登録番号や法人番号で納税者を管理しようとしていると考えられます。4.来年の紙申告は税務署の押なつがなくなる
2024年1月4日に、国税庁より次の発表が行われています。「国税庁においては、納税者の利便性の向上等の観点から、『あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会』を目指し、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し(税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX))を進めているところです。こうした中、e-Tax利用率は向上しており、今後もe-Taxの利用拡大が更に見込まれることや、DXの取組の進捗も踏まえ、国税に関する手続等の見直しの一環として、令和7(2025)年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わないこととしました」
つまり、来年以降の紙での申告については、税務署で収受日付印の押なつをもらえません。押なつがないことにより、申告書を提出したかどうか、税務署とトラブルになる可能性があります。提出したことをきちんと記録するなど、ご自身での管理が必要です。