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【抗議文】「もんじゅ」は「動かすことが前提」発言を撤回し、今すぐ廃炉にするよう求める
2016.08.24
2016年8月24日
文部科学大臣殿
「もんじゅ」は「動かすことが前提」発言
を撤回し、今すぐ廃炉にするよう求める
兵庫県保険医協会
環境・公害対策部長 森岡芳雄
多数の機器点検漏れなどの不祥事が発覚した日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」について、7月20日、馳浩文文部科学大臣(当時)は朝日新聞のインタビューに対し「廃炉という選択肢は現段階でまったくない」、「動かすことが前提」と発言した。
「もんじゅ」は、比放射能が大きく、半減期が長く、化学反応性の高く、内部被曝に格段の影響をもたらすα線を出す毒性の強いプルトニウムを高濃度で燃料として使用する。プルトニウムは化学反応性が高いため、通常の軽水炉原発のよう冷却剤として水を用いることができず、液体の金属ナトリウムを使用している。この金属ナトリウムも反応性が高く、水と接触すると爆発的に水素を発生しながら、発熱する。空気とのナトリウム生成物は、金属腐食作用を持ち、配管などに損傷を与えやすく、重大事故につながりやすい。金属ナトリウムは不透明で内部の目視点検すらできない。増殖と核分裂の両方を並行して行う増殖炉では核分裂の制御が元々難しいが、冷却剤がナトリウムであるために一般の軽水炉原発のようにホウ酸水注入による暴走制御などができず、制御棒のみに依存しており、重大事故発生時にも放水による冷却も不可能である。増殖炉とは名ばかりでプルトニウムの倍増に50~90年を要するとされている。増殖と言っても燃料の再処理を必要とし、燃料の取り出しの際にも不活化ガスなどで守る必要があり、交換も使用済み燃料の保管も容易ではない。
このように「もんじゅ」は、他の原発に比して恐ろしく危険性が高い。重大事故発生時、はるかに強力な放射能汚染物質の放出を招き、国土の広範囲を荒廃させ、内部被曝から国民の健康と声明を危険にさらし、甚大な被害をもたらす。
2011年以降プール浄化フィルター不使用、8月3日ナトリウム循環ポンプ冷凍機の故障、昨年11月使用済み核燃料プールの水質悪化警報6か月間無視、また、今年3月末までに行う予定だった機器の点検が実施されず、3カ月にわたり未点検を知らせる警告表示を担当者が無視していたことも明らかになった。1万件を超える点検不備に端を発して原子力規制委員会から勧告を受けるまでに至った管理体制の甘さが、今なお改善できていないことが浮き彫りになっている。技術的にも現状以上の受け皿作りは困難と思われる。建設から22年間で1年間の発電期間もなく、停止している現在も毎年200億円以上の維持費がかかり、これまでに計1兆円以上もの税金が投じられている。
われわれは、いのちと健康をまもる医療者として、「もんじゅ」を「動かすことが前提」とする政府の方針に強く抗議するとともに、周辺住民への健康被害のおそれが極めて高く、維持経費に莫大な費用がかかる高速増殖炉「もんじゅ」の即時廃炉を、あらためて求める。