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【決議】兵庫県保険医協会 第94回評議員会
2018.11.18
兵庫県保険医協会 第94回評議員会決議
今年の診療報酬改定は、全体で1・19%のマイナス改定となった。本年度の会員意見実態調査では、改定について「満足」と答えた会員は1・81%に過ぎず、43・4%が「不満」を表明している。実際、診療報酬請求額は33・6%の会員医療機関でマイナスとなっており、医療機関の安定的経営と地域医療の充実にはほど遠い改定であった。
また、患者・利用者負担増も続いている。今年に入って、高額療養費制度における高齢者の上限額引き上げや入院時の食事代負担増、一定の所得以上の高齢者の介護サービス利用料引き上げなどが行なわれ、多くの国民、高齢者を医療・介護から遠ざけている。
安倍内閣は「少子高齢化に真っ正面から立ち向かい、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めていく」とし、今後3年間での社会保障改革を重点課題に位置づけている。しかし、その中身は高齢者を対象とした負担増と給付削減である。新たに後期高齢者医療制度の患者窓口負担を現在の原則1割から2割へと倍化させることや、受診時定額負担の導入、参照価格制度の導入などが議論されている。患者負担増は低所得者を制度から排除し、国民皆保険制度の根幹を揺るがすものであり、許すことはできない。そもそも「少子高齢化」の問題点は高齢化ではなく、若年層の雇用不安や低賃金、社会保障制度の貧困などによる少子化である。少子化に立ち向かうためには、政府が進めてきたこれらの政策の転換こそが必要である。
政府は、社会保障財源の確保を理由に来年10月の消費税増税を正式に表明した。しかし、安倍政権下での社会保障制度改悪と法人税率の引き下げを見れば、この理由がただの口実であり、消費税増税の実態は法人税減収の穴埋めでしかないことは明らかである。今必要なことは、大企業や富裕層の応分の負担で、抜本的に社会保障費を増やすことである。
また、安倍首相は所信表明演説で、憲法審査会に自民党の改憲案を示すとの姿勢を明確にした。安全保障関連法の施行から2年が経過した。これに基づき、これまでの国連PKOの枠組みやその時々の措置法に縛られることなく、多国籍軍に自衛隊を参加させた。こうした経緯を見れば、安倍政権下での改憲は、自衛隊をアメリカ軍と一体となって世界中で軍事行動を行なうことのできる軍隊へと変質させるものである。
私たちは、いのちと健康を守る医師・歯科医師として、医療・社会保障制度の充実で、格差や貧困をなくし、世界の平和と国民の生活を守る政治を実現するために引き続き全力で奮闘する決意である。
記
一.診療報酬・介護報酬を引き上げ、不合理是正を行なうこと。
一.患者・介護利用者負担増計画をやめること。
一.子どもの医療費は国の責任で中学3年生まで窓口負担を無料にし、高校3年生世代まで無料を目指すこと。
一.保険でより良い歯科医療実現のため、歯科技術料を正当に評価し、保険適用範囲を拡大すること。
一.消費税の10%増税を中止し、医療にはゼロ税率を導入して医療機関の控除対象外消費税負担を解消すること。
一.生活保護基準額の引き下げなど生活保護の制度改悪を行なわないこと。
一.高すぎる国保保険料を引下げ、短期被保険者証や被保険者資格証明書の発行をやめ、不当な差押さえを行わないこと。
一.医師の過重労働を解消し、不足する医師数をOECD平均まで引き上げること。
一.薬価の高止まりや混合診療の全面解禁へと道を開く危険性の高い日米FTA協議を行わないこと。
一.東日本大震災や熊本地震、大阪府北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震、台風第21号などの災害被災者に対し、国の責任で支援を抜本的に強めること。
一.再稼動した原発を直ちに停止するとともに、さらなる再稼働・新増設・輸出を行わず、原発ゼロ政策の推進、再生可能エネルギーの拡大を進めること。
一.沖縄・普天間基地を無条件撤去し、辺野古沖への新基地建設計画を中止すること。
一.唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准するとともに、条約を拒否する国に批准を求めること。
一.平和憲法を守り、憲法通りの国づくりをめざすこと。
以上、決議する。
2018年11月18日 兵庫県保険医協会