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主張 「医師の働き方改革」医師を抜本的に増やせ
2019.02.25
厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」は1月11日、三次救急を担う医療機関などで勤務する医師に適用される時間外労働の上限を「年1860時間」とする案を提示した。月平均150時間を超える時間外労働となり、過労死ラインと言われる月平均80時間の倍ほどの時間外労働になる。
同検討会の資料では、勤務医の1割にあたる約2万人が年間1920時間を超える時間外労働をしていること、自殺や死を毎週または毎日考える医師が3.6%いることが明らかになっている。医師の自殺者数は毎年70〜90人に上る。この案は、長時間労働で追い詰められている医師を放置するものだ。
全国医師ユニオンの調査では、当直明けに「集中力や判断力が低下する」との回答が約8割、診療上のミスが「増える」が26.8%と、医師の長時間労働が診療の質に影響を及ぼしていることが明らかになっている。医師の長時間過重労働は、患者をも危険にさらしている。
この理由について検討会は、医師の過労死ラインを大幅に超える長時間労働により地域医療が確保されていることから、やむを得ないと説明している。医師の命を削るような献身で何とか医療が支えられているという危機的現状を、厚労省が認めたということだ。
検討会はこの上限を適用する医療機関を三次救急や多数の二次救急、高度ながん治療、移植医療、在宅医療の中心などを担う医療機関に限定するとしている。しかし、新専門医制度や地域医療構想で各病院の大規模化が進む中、多くの病院がこれらの条件に当てはまることになる。
また、検討会は医師需給が2028年頃に均衡するというが、その根拠となる推計は、医師が過労死ラインまで働くことを前提としており、将来にわたって医師に長時間労働を強いることになる。医師不足と、その解決策である医師数増には全く言及しておらず、医師の働き方改革とは名ばかりの現状追認である。
また女性医師も増加しているが、女性も男性も働きやすい環境づくりからはほど遠いものである。
医師も一般労働者と同じ人間であり、労働時間規制は一般労働者と同じにすべきだ。そのためには、医師数を先進国並みに抜本的に増員すること、医療機関が勤務医に充分な待遇を提供できるよう、診療報酬を大幅に引き上げることが不可欠である。