兵庫県保険医協会

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主張 会員署名のお願い 社会保障の拡充へ診療報酬引き上げを

2019.10.25

 9月20日、政府は全世代型社会保障検討会議を立ち上げた。いわゆる有識者会議であるがそのメンバーは、大企業の代表が並ぶ一方で労働側を代表するメンバー・患者側の代弁者はいない。また女性の有識者も一人だけである。社会保障の給付と負担、多様な働き方やパートへの厚生年金の適応拡大などが論議されようとしているが、どれだけ当事者の声を反映できるのかは大いに疑問である。
 政府は社会保障を拡充するとの口実で、この10月に消費税を10%へ引き上げたが、同時に75歳以上の患者窓口負担の原則2割化、湿布薬や花粉症薬の保険外しを検討中である。これ以上の患者負担増、給付削減は患者さんの受診抑制を深刻化させ、国民の健康、そして命を脅かす。全世代型社会保障に名を借りた、患者・高齢者いじめを決して許してはならない。
 一方、野党の対応でも気をつけなければならないことがある。「『医療の民主化』改革で、次世代に責任ある政治を実現する議員連盟」の動きだ。野党が協力して政府の社会保障改悪に反対しているようにも見えるが、その内容は〝登録制のかかりつけ医制度の創設〟〝受診時定額負担の導入〟〝かかりつけ医への受診は包括報酬制または出来高払いとする〟などであり、看過できない。法案提出などに至れば大混乱必至である。それぞれの参加メンバーがどれほど熟慮しているかは疑問だが、社会保障を拡充させる内容とするよう、各議員に働きかけることが必要と思われる。
 与野党ともに社会保障費抑制を推し進めようとしている背景には、国家財政危機論、社会保障費亡国論がある。これらは全く誤った世論誘導であり、きちんと対峙することと正しい事実を知らせることが重要である。ましてや〝診療報酬を上げると、患者窓口負担、保険料が上がる〟といった類の論調には、問題の本質をていねいに、くり返し冷静に説明する必要がある。
 各地で、不採算の救急医療、夜間・時間外診療、産科・小児科医療の縮小などの医療崩壊が起こりつつある。問題の根底には、医師の時間外労働の上限を1860時間としたことに象徴される医師不足、病院経営が困難となるほどの低診療報酬がある。国民医療の崩壊阻止へ診療報酬の大幅引き上げは緊急の課題である。会員諸氏の署名への協力をお願いしたい。