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主張 今国会を振り返って 憲法の精神に基づいた国会運営を求める

2020.06.25

 6月17日に通常国会が閉会した。今国会も、安倍政権による憲法無視の国会運営が目立った。
 中心課題である新型コロナ感染症対策として、一般会計総額で過去最大となる31兆9114億円に上る第2次補正予算が成立した。医療支援、家賃支援、雇用調整助成金の上限額引き上げなど、拡充された点も多いが、問題点も目立つ。
 一つは医療機関を含む中小企業が、倒産・廃業の危機に瀕しているにもかかわらず、その支援が〝遅い・少ない〟ことである。雇用調整助成金や持続化給付金の給付では、事前審査のため支給が遅く、また支援へのハードルも高い。これでは激増するコロナ失業・倒産を食い止めることができない。
 また、予備費として全体の3分の1にあたる10兆円もの巨額を計上したことも問題である。わが国では、財政民主主義の観点から、日本国憲法第83条にあるとおり、国会審議を経て予算案を決定することが大原則である。10兆円もの予算の使途を政府に白紙委任することはこの原則に反するもので、憲法と国会を形骸化するものである。政府は、国会を延長してでも野党の求めに応じ、補正予算予備費の使途を明確にするよう、議論するべきであった。
 コロナ禍の陰で成立させた法案では、年金制度改定法案、スーパーシティ法案がある。年金制度改定法案は、毎年年金額を削減するというマクロ経済スライドの仕組みを放置したまま、年金受給開始時期を75歳まで遅らせられるようにする等、高齢者に就労延長を求める内容で、老後も安心できる年金制度とは程遠い。スーパーシティ法案は、企業などが国民の個人情報を一元的に管理するもので、わが国が中国のような監視社会となってしまう危険を内包し、また自己情報コントロール権の確立を求める世論にも逆行する。これらの法案を、コロナ禍の中で十分な国民的議論を経ることなく成立させたことは、大きな問題である。
 一方で国民の反対で採決が見送られた法案では、検察庁法改定案、種苗法改定案がある。検察庁法改定案は、定年延長の例外規定をもって、検察庁長官の人事権を恣意的に運用できるようにするものである。検察を政権が私物化するたくらみに、国民の批判が集中したことは当然だ。種苗法改定案も、農業者が苗を自家増殖する権利を侵害するものであり、成立断念は妥当である。
 安倍首相が執念を燃やす改憲では、憲法9条に加え、緊急事態条項の創設が狙われている。今国会でも憲法審査会を開催し、国民投票法を成立させ改憲の呼び水とすることが狙われたが、野党の反対で見送られた。緊急事態条項創設は、政府に超法規的な権限を与え、国民の人権を制限・抑圧する危険がある。この間の緊急事態宣言とは全く異なるもので、コロナ禍に乗じて改憲を推し進めるなど言語道断である。改めるべきは憲法ではなく、安倍政権の政治手法である。
 最後に、今国会で提出予定だった、75歳以上の窓口負担2割化の法案提出は先送りとなったが、審議会では負担増具体化が議論される予定である。検察庁法改定などのように、反対の世論が高まり、内閣支持率が下落すれば、阻止することが可能である。「みんなでストップ!負担増」署名に年末まで引き続き取り組み、目標の5万筆を集め、負担増を阻止しよう。