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声明 神戸製鋼石炭火力発電所増設計画アセスメントでの 環境省・経産省の不適切な事前折衝に抗議する
2020.10.28
2020年10月28日 兵庫県保険医協会 環境・公害対策部長 森岡芳雄
神戸製鋼所が神戸市灘区で進める石炭火力発電所増設計画について、環境アセスメント(環境影響評価)の手続きのなかで、環境大臣意見案を事前に経産省が確認し、修正を求めていたことが明らかになった。
神戸新聞の報道によると、神戸製鋼の作成した配慮書に対し、環境大臣意見には当初、石炭火発が天然ガス火発と比較して二酸化炭素を「年間380万トン以上多く排出する」、「(二酸化炭素排出削減の)環境保全措置が満たされない場合は発電所設置を認めることができない」との記載があったが、経産省が修正を求め、環境省が応じたという。他にも、神戸製鋼が高炉を廃止した分の大気汚染物質の減少分について、石炭火発増設で排出量を増加させ、「減少分を反故にしないよう」と求めた記述も削除されたなど、環境保全のため不可欠と考えられる意見が削除されたことが明らかとなっている。
環境アセスメントの手続きを定める環境影響評価法では、環境大臣は、環境の保全の見地からの意見を担当大臣(経済産業大臣)に述べ、担当大臣はこれを勘案することが定められている。担当省庁が事前に環境大臣意見案に修正を求めることなどもってのほかであり、環境省が事前協議に応じることは、環境アセスメント法の完全否定である。今回、アセスメント手続きが適正に行われなかったことは明白であり、決して、容認できるものではない.
われわれは命と健康を守る医師・歯科医師として、健康被害の発生や地球温暖化の観点から本計画推進には問題があると懸念を表明してきた。CO2の排出量が多い石炭火力発電所は、新増設を認めず撤退するのが、パリ協定の実現をめざす世界的な流れである。
本計画の環境アセスメントには元から大気汚染の評価が不十分であるなど、問題点が数多く指摘されており、経産省には本件のアセスメントで事業を適切とした意見書を取り下げ、住民の健康と環境を守る観点から改めてアセスメントをやり直すことを強く求める。環境省には、現在稼働中のコベルコパワー神戸発電所を含め、これまでに実施されたすべての環境アセスメントが適正に行われていたかを再調査し、調査結果を公表するように求める.また、神戸製鋼には、不適切な環境アセスメントにより認可された本計画を即刻中止するよう求める。