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【決議】第97回 兵庫県保険医協会評議員会決議
2020.11.15
第97回 兵庫県保険医協会評議員会決議
今年、世界中で猛威を奮った新型コロナウイルス感染症は、各国が抱える社会的な矛盾を白日の下にさらした。日本においても、政府が続けてきた「新自由主義」政策によってもたらされた社会の脆弱性が明らかになった。とりわけ医療費を抑制するために行われてきた診療報酬の度重なるマイナス改定や医師をはじめとする医療従事者数の抑制、地域医療計画に基づく急性期病床や感染症病床の削減、病院や保健所の統廃合は新型コロナウイルス感染の脅威に患者・国民を晒したばかりでなく、政府による外出自粛要請やマスコミの過度に不安を煽る報道等が招いた受診抑制は、医療機関と地域医療の持続可能性を脅かす事態にまでなっている。
また、国民経済や暮らしの分野でも、労働法制の規制緩和による不安定雇用の拡大や低賃金、消費税増税等により新型コロナウイルス感染症流行下において多くの人々を苦しめている。
安倍晋三首相の突然の辞任を受けて、新たに発足した菅義偉政権は、こうした国民の困難に対して、生活や営業を保障する施策をとらないばかりか、さらなる患者・国民負担増を計画し、地域での病院統廃合や病床削減路線に執着している。一方で「Go to キャンペーン」や社会のIT化等を理由に、一部の大手広告代理店や旅行代理店、IT企業等への利益供与には余念がない。
また、菅新政権は、法の下の平等や立憲主義等、日本を民主主義国家たらしめる原則を軽視する姿勢を安倍前政権から強く引き継いでいる。菅首相が日本学術会議の新会員を任命拒否し「学問の自由」を脅かしたのもこうした政権の特徴を示すものである。 就任から40日を経てようやく召集した臨時国会での所信表明演説で、菅首相はこれまで政府が社会保障改悪のたびに用いてきた「自助・共助・公助」を「めざす社会像」としたが、これは、「新自由主義」政策の誤りを転換するどころか、継続することを宣言するものである。
我々は、いのちと健康を守る医師・歯科医師として、格差と貧困を助長する政治を転換し、全ての人が健康で幸福な生活を営める世の中を実現するために、引き続き全力で奮闘する決意である。
記
一. 新型コロナウイルス感染症に伴う医療機関の減収に対し、昨年度診療報酬請求額に基づく差額補填を認めること。
一. 未知の新型感染症に備えるためにも医療費抑制政策を転換し、公衆衛生体制や医療提供体制を抜本的に
強化すること。
一. 診療報酬・介護報酬を引き上げ、不合理是正を行なうこと。
一. 医師不足を解消するため医師数をOECD平均まで引き上げること。
一. 患者・介護利用者負担増計画をやめること。少子化対策としても子どもの医療費は国の責任で中学3年
生まで窓口負担を無料にし、高校3年生世代まで無料を目指すこと。
一. 保険でより良い歯科医療実現のため、保険適用範囲を拡大し、歯科技術料を正当に評価するとともに逆ザヤとなっている金パラの償還価格を是正すること。
一. 消費税を減税し、医療にはゼロ税率を導入して医療機関の控除対象外消費税負担を解消すること。
一. 高すぎる国保保険料や介護保険料を引き下げ、不当な差押さえを行わないこと。
一. 一部医薬品の高薬価を是正するとともに、日常診療に不可欠な医薬品について安定供給できるように適
正な薬価を設定すること。
一. 医療現場に混乱をもたらし、患者にも医療機関にもメリットのないマイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入を中止すること。
一. 生活保護基準額の引き上げや捕捉率の向上など生活保護の制度を改善すること。
一. 東日本大震災をはじめこの間の災害被災者に対し国の責任で支援を抜本的に強めること。
一. 再稼働した原発を直ちに停止するとともに、さらなる再稼働・新増設・輸出を行わず、原発ゼロ政策の
推進、再生可能エネルギーの拡大を進めること。
一. 震災復旧作業等で飛散したアスベストの曝露を受けた人に対する健診や補償を充実させるとともに、老朽化した建築物の解体時等におけるアスベストの適切な管理を行うこと。
一. 沖縄・普天間基地を無条件撤去し、辺野古沖への新基地建設計画を中止するよう米国に求めること。
一. 日本の主権を制限している日米地位協定を抜本的に見直すこと。
一. 日本政府は唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准するとともに、核保有国など条約を拒否する
国に批准を求めること。
一. 平和憲法を守り、憲法通りの国づくりをめざすこと。
以上、決議する。
2020年11月15日 兵庫県保険医協会